白い何もない壁 ただひとつ切り取られた 細く小さな天窓 それがわたしの睛(ひとみ) 手を伸べても 届かないあの空 “イツカ誰カ コノ鳥籠ヲ 壊シテクレル” あの窓のその先の 水灰色の空に 開かれてさざめいた 白い羽の光る軌跡はただ遠い 白い壁に描かれた 薄墨の色の映画 空虚(うつせ)でできた箱庭 わたしの世界のすべて 曇る硝子 そっと息をかけて 紡ぎ出したあたたかな 闇瞼深く包む 左の睛に ゆらりゆら 映ル ワタシノ、誰ノ? 歪んで重なる 揺れて軋む 確かな痛み、記憶 あの窓のその先へ 水灰色の空に 鎖されて囲われた 硝子の檻切り裂いて 降り注げ白い花 風纏い羽になれ 開かれて凍てついた ただ広がる涯てない空はまだ遠い