閉ざされた海の底深く眠る 古の名も無き都 青白く輪郭描く 水銀灯の灯り 照らしだされる石畳み 街路が水底を走り うず高く積み上げられた 塔はただ立ち尽くして 誰も知らない歴史を胸に秘め 長い長い夜を数え 深く冷たいこの蒼の世界で何を語る 瓦礫の丘に今美しく咲き誇るウミユリ 空ろに建つ亡骸に 芽吹く命は 強く、優しく 庭園へ続く回廊を 魚の影が舞い踊る 艷やかに灯るネオンは ゆらぐクラゲの葬列 誰も知らない軌跡は海に消え 遥か遥か遠い記憶 深く冷たいこの蒼の世界で誰を想う 白亜の壁に刻んだ文字は詠む外つ国の時よ 錆びついた時の鐘よ 今一度だけ 響け、彼方へ 力強くそびえ立つ海の棺の王国は 滄海に沈みてなお 朽ちることなく 此処にーーああ 瓦礫の丘に今美しく咲き誇るウミユリ 空ろに建つ亡骸に 寄せる餞 蒼き灯火