はらはらと舞うは薄紅 朧夜に煌めいて 聴こえるか お前の為に紡ぎ出す極上の調べ ゆらゆらと走る波紋は 幾重にも重なって 聴こえるか 懐かしかろう 何度でも奏でてやるから 今は眠れ ざわざわと舞うは蜉蝣 朧夜に揺らめいて 聴こえるか 歪な薄刃 片羽が奏でる静寂 ひそひそと伝う波紋は 幾重にも重なって 聴こえるか 恐ろしかろう 何度でも歌ってやるから 今は眠れ 耳の痛みが消えるまで 恨みは我が弦に集う儚き刃 春の夜に狂う沙羅双樹が笑う ふらふらと琵琶を探して 宙をかく細い腕 知らぬだろう 付喪と化した我が姿 盲いたその眼は きらきらと水鏡の様 朧夜を写し出す 聴こえるか 懐かしかろう 共に歌った愛しき人よ ここにいるぞ ここにいるぞ 狂い咲きやがて枯れて散りゆく 兵どもが夢の跡 経に隠された語り部の歌 今宵も求めて彷徨って はらはらとあふるる涙 その歌を待ちわびた 灯火は弱々しくも 幽玄の輝きを放つ しとしとと落ちる影より 反魂の香が薫る 月明かり 九十九の祈り 頼りないその手を掴んで 誘うの鬼火 諸行無常の音に踊れ 乱れよ我が弦に唸れ嵐の如く 地獄の塚より 鶴が走り去る 恨みは我が弦に集う儚き刃 春の夜に狂う沙羅双樹が笑う