領地(りょうち)の外れの森 あなたと狩猟小屋(しゅりょうごや)へ 漆喰(しっくい)の長(なが)い部屋 鷲(わし)の剥製(くせい)が迎える ヴァニタスの絵を飾り その横には牡鹿(おじか)の首(くび) 去(きょ)年の秋のわたしの獲(え)物 銃(じゅう)身 中を磨(みが)く 手入れは怠(おこた)らぬよう 少しでも錆び付けば 名うての腕前も鈍る のし掛かるこの重み 抱えるときの恍惚(こうこつ)を 今日はあなたに教えてあげる 薬莢(やっきょう)詰めたら 向かえケモノ道 木(こ)立 横切(ちよこぎ)ってゆく影に 音を立てず近づく 滾(たぎ)ってゆく血は この体に巡れる 野生の証なのか 息を殺し構(かま)えよ さあわたしの右(みぎ)目が 神になる瞬間 銃声(じゅうせい) 衝撃(しょうげき) 命中 ナイフで喉を切って 血を抜く 禽(とり)は羽を 獣は皮(かわ)剥いで 骨(ほね)に沿(そ)って腹を裂いて あたたかな内(ない)臓を 傷つかぬよう抉(えぐ)り出す これが生命 恵み 源(みなもと) 猟犬(いぬ)にも与えよう 料理人(りょうりにん)はいない 猟師(りょうし)のように肉(にく)を捌(さば)き 鉄(てつ)の鍋(なべ)で煮込(にこ)もう その間(かん)あなたと くべる暖炉(だんろ)の前で 番(つが)う動物ぶつ)になる ほてった肩に牙を ふるえる脚に爪を こぼれる葡萄酒(ぶどうしゅ) あふれる肉汁(にくじゅう) 饗(きょう)して 有り難(がた)く食(た)べる 一滴も一 欠片も 残さぬよう体へ わたしたちはまた これで一生(いっしょう)の中の 尊い一日(いちにち)を生き 満たされる悦びを 繰りかえす渇望(かつぼう)を 自然の畏(おそ)れを つながる己を 大地の上いつかは 追われ伏したこの身が 運命という矢に狩(か)られる 最期の日まで