この辺に座ろうか ほら 隣においで こうやって 空を見上げるのが好きなんだ 浮雲が流れていくのを ボーと目で追いながらさ 風が木の葉っぱを揺さぶる音  漂ってくる緑の匂い 涼しげなせせらぎの音  こういうのを感じてるのが何だが性に合ってるんだよね 何その顔 意外だとでも言いたいわけ ちょっと失礼かなそれ へへ 冗談だよ 君って本当反応がそのまんまだから  ついからかいたくなっちゃってさ 何の話だっけ ははは そう この空のことだ 僕が空を見上げるのが好きなわけ 空をボーと見上げてるとね 世の中 ままならないものだなって思うんだ こうして 空の下でどれだけあがいてみたって 全てはあの雲みたいに流れていくものなのかなって 以前は人を切るのが僕の仕事だったし 必要があれば 殺し合うことだって厭わなかった ただ近藤さんの役に立ちたいって  それしか考えていなかったからね だけど こんな体になって  僕の望みが絶たれた それを認めたくなくて  新たな力を得てみたけど どうなったかな  君も知るとおりだね 結局 僕の体から死病の影は消えてない ほらね ままならないものだよ ほんとに は- やっぱり そういう顔する  仕方ないじゃないか  人間は誰でもいつか死ぬものなんだから それが早いか遅いかの違いだよ  僕が殺してきた相手だってもっと生きたいと思ってたはずだ 他人の命を奪っておいて  自分だけ死の影から逃れようなんて 都合が良すぎるだろう だからいいんだ  そういうものなんだって  わかってるから なぜ君にこんな話をしかたって  それはね 君に教えたかったからだよ 僕が好きなものの1つを  たぶん今日から先 君は空を見上げる度に 僕のことを思い出す  僕が語った言葉を思い出す この空の下で生きる限り 君は絶対に僕を忘れられないんだ ある意味  残酷な置き土産かもしれないね ははは 望むところか いってくれるな まあ 別に 今日はすいいきなり死ぬわけじゃないだろうし  まだ時間がある  僕はその間君に忘れられないように たくさんの話をしよう こんなふうに 空を見上げながら  ね