ただ 表面張力 表面張力 この受け皿から溢れただけ 表面張力 表面張力 この街からたった2滴だけ  ああ 私の生まれた街は 一年の半分が冬で 都市ではないが田舎でもない 温度も彩度も低い場所 「人様に迷惑だけは掛けるな 私にはいくらでも掛けていいから」 貴方に教わり 手許不如意でも生きてきました ザラメが付いた甘いパン 頬張りながら頬を緩ませた 私は笑うことが苦手だったけど あなたに心配されぬように そんな子供だった頃から 心から愛した貴方が 残語過ぎる時の流れに侵され 私の名前以外全てを 忘れてしまった 表面張力 表面張力 この受け皿から溢れただけ 表面張力 表面張力 この街からたった2滴だけ ああ 光熱費 食費 住民税  所得税 家賃 介護費用 その他諸々の 生きてることの罰金を払い続けながら 人格を全部凍らす風 およそ流行とは程遠い ジャンバーで防ぎ 一日5~6000円の魂を削りに向かう 貴方の教えが嘘だった事にならぬように守り続けた 「真っ当に生きろ」「人を恨むな」 「そうすれば誰かが見てくれてる」 明日のパンを切り詰めて 吐く血反吐が無くなって 片付けても 誰かに頼ることなんて出来なかった 無慈悲な街と時代、人々を 恨めなかった 表面張力 表面張力 この受け皿から溢れただけ 表面張力 表面張力 この街からたった2滴だけ  愛は金じゃ買えないと言うが 愛じゃパンも買えやしない 愛なら掃いて捨てるほどある 誰か愛を買い取ってくれ 私の人生は貴方を幸せにするためにあるんだ あなたが幸せじゃないならば今すぐ私を殺してくれ 凍ったパンを齧りながら同じ事を考えていた 小便臭い体と皺苦茶の顔を交互に見つめながら この世で一番純粋な愛を表した 表面張力 表面張力 この受け皿から溢れただけ 表面張力 表面張力 この街からたった2滴だけ 愛は金じゃ買えないと言うが 愛じゃパンも買えなかった それでもあなたを愛しています あなたの子供で良かったです ああ