薄汚れた猫が 震えている 鳴いて 泣いて 雨を降らせて 凍てつく雫が 大地を叩く 涙 涸れ果てるまで 行き場もなく 立ち尽くした 少女の手を 彩る 季節外れ 色づく花 手折られてゆく 金の光 黒い影 少女に花を 渡す 色が 香りが 故郷の花と 似ていた 時は廻り いつしか ひとつの噂 口を揃えて 人々は語る… 亡国の姫君は 生きている 強く 気高い 誇りを胸に 黒の使い魔を 従えている 故郷を 取り戻すため 幾年の時が流れても 諦めはしない この手にあの花を 抱くまでは 幼い日の 記憶にはとても程遠い 故郷よ今 私は帰った…! 誰ひとり 出迎える者はない 何もかもが 壊れた庭に 黒い猫だけが 私の腕に 抱かれて 眠るだけ 薄汚れた少女(ねこ)が 震えている 青い 青い 青空の下 凍てつく雫が 大地を叩く 涙 涸れ果てるまで