あの日交わした ふたりの契り その心のうちには残っていますか 思い出すのです あなたの御姿 齢みっつ半とて 忘れられず 作りし鎖などは 桜はたやすく壊すのです この見えない壁に阻まれて ふたりずっと同じ月を 見てるはずだけれど届かず あなたのことを護ります あなたが桜の木なのならば 一輪の花にすぎないが 幹を守りきり散ります あなたのもとにいたいのです あなたが桜の花なのならば その身梢に結び付けて 散らせるわけには参りません 行かねばならぬ戦があります 桜は穢れた土では育たぬでしょう 血や悲しみで穢れは拭えるでしょうか どんな大地にでも根張って見せます 深紅の海の中に美しく立つ木ありましょうか 蕾み食う虫は払わねば あなた想い言葉紡ぎ 伝え届けてなお わからず 数多の花弁を携えて あなたが折れれば花皆散る それに比べて私などは 花の一片に過ぎない どうしても行くというのなら 私も共について行きます 離れた花は散りゆくのみ ならば離れずに行きます 約束守る前にいかないで あなたをおいかけず ここにいるべきではないのでしょう 都で待っていてください どうか 桜 どうか この身 あの方と一緒に 守って お許しください お姫様 これが最後の言葉となれど あなたのご恩忘れません お返しに散って参りましょう 雨が降れば桜の花 大地に落ちて腐り果てます 花がなければ桜はただ 枯れ行くのみしかないのです 冷たく止まぬ雨の夜に 突然迫る鉄の刃が 白く小さき身貫いて 我が目の前にて潰えた 「約束守れずごめんなさい」 震えるかすかな声だけれど あなたの耳に届きますか 「桜絢爛に咲かせて」