さやかに雪の音が聞こえてるような日にお城中のドアを開けて回る朝 寒いのはね、苦手だからどれかひとつの向こうに 暖かな陽だまりが私を待ってないかな そんな馬鹿みたいなことあるわけがないってくらい判るはずなのに、でもまだ諦めきれなくて みんながね、笑うけど 鼻は冷たいけど 諦めずに探したら、いつかは辿りつけるって 信じてノブを回すわ 当たり前の風景はずれ続くけどまだまだ私は探すの、夏を ♪~~~ 美しい御伽話を人間わたしたちが信じてる限り語り継ぐ限りきっとまだ扉の向こうに《妖精郷その場所》は残ってるの そう呟く U.P の言葉は決して人間には通じません。人間も、 U.P の言葉を聞き取れません しかし今このとき、不思議なことが起きていました。ふたりは言葉を超えて、お互いの意思を大まかにでも掴み合っていたのです それはかつてセリドウェンの心臓に施された、貴重な古代の赤珊瑚を使った魔法の名残が、旧き生き物 U.P を前にして、お互いの激情を介して、予想外の効果を齎したのかもしれません ふたりの心は今、つかのまの共振状態にありました 「お前の心臓、昔、なにかがあった。壊れたのに、蘇った。そしてまだ元気。これからもずっと……長く……元気。間違いなく、この先もお前生きる。私にはわかる。保証する…… 滅びた美しいもの、蘇ること、あるのか?生き続けることあるのか。誰かが大切に思うのならば。ずっと生きるのか?存在なくならないのか?」 もちろん、セリドウェンには言葉は通じなかったでしょう。でも、心が大意を理解しました。姫は微笑み、大きく頷きました 「夏への扉があるなら……《妖精郷Celt(ケルト)》までは何マイルくらいかしら?きっと辿りつけるわ!」 「《妖精郷Celt(ケルト)》良い単語なのか。私のための言葉なのか。お前私の為に《妖精郷Celt(ケルト)》言ったのか?私のこと馬鹿にしたのではなく?」 姫はまた頷きます。力強く 「皆もそうだったと言うか?お前正直に答えるのならば、私信じよう。なるべく怒らない努力しよう。他の人間も皆、私のこと馬鹿にしているのではないのか?」 「もちろんよ!みんな、汚れなく美しいものに憧れているの。きっと。大好きだから、この世のどこかで、永遠に生きていてほしいと思ってるの。それがすべてよ」 U.P は少し沈黙し、髪の毛に見える触手をいくつか複雑な形に動かしました。それは誰ひとり知る由もありませんでしたが、納得と了承を示すサインでした 「お前も誰かに、大好きだから……生きていてほしいと思われた。説得力ある。理解した。今日本当はなんの催しだったか」 「私の御誕生日会よ」 「……お前の言うことわかった。《妖精郷Celt(ケルト)》ない、言ったの、悪かった。取り消す。それから……これからも何度でも、飽きるほど誕生日来る。お前の心臓もう治っている。保証する」 「心臓って、何の話?」