静けき宵の森 息吹(いぶ)く風に乗り 薄紅(うすべに)の一片(ひとひら) あえかに匂う 愚(おろ)かな贄(にえ)の宿命(さだめ) 護ることも適(かな)わぬまま ただ偏(ひとえ)に世(よ)を憂(うれ)いた 優しき人よ さくら さくら 嘆(なげ)きに染まり 放(はぐ)れ心に積(つ)もる 修羅の如(ごと)き 悪しき私を 隠(かく)すかのように 祈りは露(つゆ)と消え 訪(おとず)れぬ未来(ゆめ)を 紡(つむ)ぐ笑顔(えがお)はまだ 翳(かげ)ることなく 音なき唇(くちびる)から 溢(あふ)るる幾許(いくばく)の戀(おも)い 熱に触(ふ)れた夜を儚(はかな)む 愛(いと)しき日々よ さくら さくら あかときの闇 巡(めぐ)らぬ時の中で まことを鎖(とざ)す 弱い私に 気付かないでくれ 在りし日の約束(ことば)を 忘れはしない 小指(こゆび)繋(つな)ぐ紅糸 夫婦(めおと)の証(あかし) さくら さくら はらはら落つる 美しき花の雨 頬(ほほ)も濡(ぬ)らす この切なさを 慰(なぐさ)めるように さくら さくら 輪廻(りんね)を汚(けが)し 艶(あで)やかに咲き誇れ 千年先も そなたと在ろう この身(み)果(は)つるまで