懐かしい夢を見ていたような気がした つまさきも視えぬ星のないしずかな夜 なみだを吸う雲がまるで綿菓子のように 渦をまいてわたしの天井に巣をつくる とおくで始まるよ 笛の音がひびいてくる 子どもらの足音 愉快におどるかのように あなたの歌が聴こえる 名もない谷の奥底で メルヒェンの嘆きを孕んだ 頁を捲り夜明けを映す 行列が通るよ 谷底が黄金にきらめく 誇らしいばら色の頬は あなたを見つけられたから ほら見て世界はこんなにも美しい 真綿のような嘘で包れたわたしの庭 あなたが優しく水をまいて呉れていた 枯れることのないあなたの自慢の花は いとしさだけ知りいつでも幸福でした 風に混じって笛の音が運ばれてくるよ 泣き声のように高くどこまでも澄んで あなたの痛いところを どうかどうか撫でさせて いっしょに眠りましょう そして暖かい夜明けに会いましょう ひかりが跳ね回る 景色をあなたが知れば あのくらいお空の向こう側まで ずっと好きになれるわ とおくで始まるよ もう誰もが気付いてる 白い天井で綿菓子がうずまいている あなたの痛む疵まで どうかどうかあいさせて あなたの嘆きは美しい 恥じることは何にもないの 行列が通るよ 谷底に花をさかせて 暗やみにかくれた温もりを知り ひとは優しくなれる ほら見て世界の夜がいまあけていく