大丈夫、僕は元気だから、そんな顔をしないで。 こんにちは。あなたと話しができて嬉しいです。 え?どうしたの?そんな心配そうな顔をして。 僕の体調が心配?大丈夫だよ。 心配してくれてありがとう。 あなたは本当にやさしい人だね。 あの頃と少しも変わっていない。 あなたと過ごした日々を最近のことのように思っていたけど、 こんなに時間が経っていたなんて、 少し不思議な感じがするよ。 ね、あなたは広島について、覚えてることはあるかな。 あまり詳しくは覚えてない?そうなんだ。 その頃は幼かったし、 君が広島で過ごした時間は短かったからね。 覚えていなくても仕方ないよ。 ごめんね。そんなに申し訳なさそうな顔をしないで。 あ、そうだ。せっかくだから、 僕のことと僕の住んでいるところについて、 改めて紹介をしてもいいかな。 ありがとう。僕は世良 花蓮(せら かれん)。 高校三年になったんだ。 あなたと出会った時と変わらず、 広島に住んでいるよ。 広島県はね、日本の中国地方の県の一つで、 瀬戸内海に面しているところにあるんだよ。 広島には、文化遺産を始め、 素晴らしい景観がたくさんあるんだ。 代表的なものは厳島(いつくしま)神社かな。 厳島という島に鎮座している神社だから、厳島神社。 千四百年の歴史を持つ日本屈指の名社で、 寝殿造りの社殿と、 海に聳え立つ朱色の大鳥居(おおとりい)がとても幻想的なんだよ。 厳島は一般に、「安芸(あき)の宮島」と呼ばれていて、 「日本三景」の一つでもあるんだ。 名勝地、景色のいい土地として選ばれているなんて、 嬉しく思うよ。 だからね、あなたにもいつか見せてあげたい。 あなたにとっても、きっと素敵な場所になると思うから、 その時は一緒に見られるといいな。 他には、ね、もみじ饅頭は食べたことあるかな。 広島の代表的なメーカーだね。 もみじの葉をかたどった和菓子。 カステラ状の生地であんを包んで焼き上げているんだけど、 今はバリエションが豊富で、 あんや生地がいろいろと楽しめるんだ。 甘いものが好きだったら、 ぜひ食べてもらいたいな。 あっ、突然笑ったりしてごめんね。 あなたが楽しそうに僕の話を聞いてくれていて、 嬉しかったんだ。 なんだか、昔に戻ったような気がしたよ。 あのね、あの頃の僕たちが一緒にいた頃のように、 またあなたと過ごせたらって時々思うんだ。 あなたと出会ったこの場所で、 もう一度会いたい。 あなたと一緒に何気ない景色を見たり、 ゆっくりと腰を落ち着けて、 他愛もない話しをしたり、 穏やかでやさしい時間を過ごしたい。 紹介しきれなかったけれど、 教えてあげたいことはほかにもたくさんあるんだ。 叶うのなら、僕があなたをいろいろな場所へ 案内してあげたいなって。 急にこんな話をしてごめんね。 でも、いつかそんな日が来てくれると嬉しいな。