誰にも告(つ)げずに何処かへ消えてしまおう 行方(ゆくえ)を北風(かぜ)にも追われぬ遠い場所まで 君への想いを模(かたど)る唇から 別れの言葉が音もなく滲(にじ)む 氷(こおり)を隔(へだ)てて 笑みかける 少女の影は 僅(わず)かも揺らめかず あの絵の中で咲く花の残り香(か)のよう 自分の姿も声も忘れてしまおう 未来も記憶も僕をつくるもの全て 精神(こころ)と物質(からだ)を交(まじ)える掌(たなそこ)から 伝わる熱(ねつ)には紅色が芽吹(めふ)く 氷(こおり)が割(わ)れたら 君までも失うことは 気付いていたのに 春を待つ振りをし続けて ふと覚(さ)めた夢(ゆめ)の透(す)き間(ま 何を望んでいたのだろう 雪消えの前に僕は 笑みを返したい 凍(い)てる君に触れながら このまま二人で跡(あと)なく溶けてしまおう 涙も血潮(ちしお)も流れぬ遠い異国(くに)へと End