語り:中惠光城 全てを失い、永い夢から覚めた彼は、この世界に別れを告げました。 私をーー『エクリス』を継承する時、彼は薄く笑みを浮かべていました。 その都市の名は、エクリス。 かつて起こした罪により、永遠に閉ざされた世界。 死に往く者が留まる、終焉の都市ーー 私の口癖のように囁いていた言葉の数々が、全て己のことを指していたのだと、ようやく気付いたからです。 そして、彼は『私』になりました。 いつの日か、そう遠くない未来。 とある少年の手によって、ふたたび捻子は巻かれるでしょう。 同じ旋律に新しい詩を乗せて。 同じ世界に新しい物語を乗せて。 私はそれまで、時を止めたこの都市で、 独り、あの月を見上げていつですーー