[00:00.00]語り:中惠光城 [00:18.07]ーー遠い、昔の物語。 [00:24.17]とある都市の神殿に、女神の力を与えられた少女と、 [00:30.46]彼女を守るために招かれた魔術師の男が暮らしいていました。 [00:38.29]触れたものを壊し、真実へ近付く者を死へと誘う少女の金色の瞳は、『エクリス』と呼ばれていました。 [00:53.36]ある日、男は少女を『花』のようだと言いました。 [01:00.50]都市の外側にある広い世界を知っていた男は、 [01:05.64]閉じ込められた狭い場所で、夢を見せながら散っていくだけの存在を、何よりも哀れだと考えたのです。 [01:17.22]しかし、少女は微笑みながら答えました。 [01:24.03]「哀れではあれまさんよ。花に心はあれませんから」 [01:31.77]偽りの世界で真実を知らずに生きること。 [01:37.76]それこそが、人に与えられた幸せなのだと。 [01:44.32]本当に哀れなのは、花を哀れだと思うこと。 [01:50.44]独りを寂しいと思う心、そのものだと……。