[00:10.98]夏風がノックする窓を開けてみると [00:15.98]何処からか迷い込んだ鳥の声 [00:21.58]読みかけの本を置き [00:24.40]「何処から来たんだい」と笑う [00:27.00]目隠ししたままの午後三時です。 [00:32.47]世界は案外シンプルで [00:34.46]複雑に怪奇した私なんて [00:37.10]誰に理解もされないまま [00:42.91]街外れ、森の中、人目につかないこの家を [00:48.01]訪れる人などいない訳で。 [00:51.84]目を合わせないで! [00:54.23]固まった心、一人ぼっちで諦めて [00:58.36]目に映った 無機物 (もの)に安堵する日々は [01:03.73]物語の中でしか知らない世界に少し憧れる [01:09.19]ことくらい許してくれますか? [01:15.11]淡々と流れ出した [01:17.32]生まれてしまった理不尽でも [01:20.24]案外人生なんで。私の中じゃ。 [01:25.74]ねぇねぇ、突飛な未来を想像して [01:31.10]膨らむ世界は今日か明日でも [01:33.31]ノックしてくれないですか? [01:37.97]なんて妄想なんかして [01:39.69]外を眺めていると [01:42.53]突然に聴こえてきたのは喋り声 [01:48.20]飲みかけのハーブティーを [01:50.55]机中に撒き散らし [01:52.96]「どうしよう……」と [01:53.77]ドアの向こうを見つめました。 [01:57.30]「目を合わせると石になってしまう」 [02:00.94]それは両親に聞いたこと [02:04.02]私の目もそうなっている様で [02:09.04]物語の中なんかじゃいつも [02:11.64]怖がられる役ばかりで。 [02:14.48]そんなこと知っている訳で。 [02:20.20]トントン、と響きだした [02:22.64]ノックの音は初めてで [02:25.69]緊張なんてものじゃ足りないくらいで。 [02:30.92]ねぇねぇ、 [02:31.45]突飛な世界は想像しているよりも [02:35.33]実に簡単にドアを開けてしまうものでした [03:03.23]目を塞ぎうずくまる姿にその人は驚いて。 [03:05.58]「目を見ると石になってしまう」と言うと [03:08.40]ただ笑った。 [03:09.93]「僕だって石になってしまうと、怯えて暮らしてた [03:18.79]でも世界はさ、案外怯えなくて良いんだよ?」 [03:27.06]タンタン、と鳴り響いた [03:29.14]心の奥に溢れてた [03:32.27]想像は世界に少し鳴り出して [03:37.63]ねぇねぇ、突飛な未来を教えてくれた [03:43.03]あなたがまた迷ったときは [03:45.96]ここで待っているから。 [04:09.79]夏風が今日もまた [04:11.89]あなたがくれた服の [04:14.63]フードを少しだけ揺らしてみせた。