(政宗) 幾戦幾万の花を散らし 赤い花弁もいつか 色褪せ土くれに変わる 鉛の種があなたの胸に咲かせた ひとひらだけは 朽ちることなく 独り眼を焼く (輝宗=父) 後悔は時を蝕む毒 前を見ていよ 誰が責めようと お前の強さを誇りに思う 血よりも地を選んだ 王であれ (政宗) 霧の中 立ちすくむ度に 大きな背が 道を示してくれた 見守ってくれていた 過ちも全て (政宗) 幾戦幾万の 雨を降らす 赤い滴はいずれ 冷え固まりはがれ落ちる お前を刺した鋼の刃を伝う ひと筋だけが 乾くことなく この手を濡らす (小次郎=弟) 嘆きは光を遮る毒 凍える指は 温めてあげる あなたの矛盾を恨みはしない だからどうか許して あなたを (政宗) 幼き日 はぐれぬように引いた 小さな手の 熱を覚えている 離さなければよかった 迷い子はどちら (義姫=母) そなたは鏡 妾の写し身 鬼の血が そなたを 食らうまでは 欠けた鏡を 誰が覗こうか 何もかも 奪い尽くされる前に この手で止めるが母の務め (政宗) 幾戦幾万の 夜を隔て 愛しさなどはじめから かけらも持ち合わせぬと あなたが向ける氷のごとき眼差し それこそが毒 静かに積もり 胸を蝕む いつかいた父母と弟 優しい日々 遠く彼方に去りあなたの憎しみだけが 我を殺す毒