作曲 : ピクセルビー 作词 : 少女病 唯一無二の存在 常に昼夜を共にしていたふたり 些細な諍いなどは、乗り越えられる程に 仲睦まじくみえた 微笑ましくも悲しいその関係性 それはか細い薄氷の上に成り立って だからこそとても美しいものにみえて…… “優しい森の優しい獣” “孤立を選び後悔したルクセイン” 代わりなんてなくて だからこそ寄り添い合って 星に 願ってみた 明日のことなんて見えないけど 「ずっと二人が一緒にいられるように」 何度だってそう繰り返したんだ―――― 「崩壊は唐突に。終わりは想いを無視して酷薄に訪れる。 それは、黒狼が躊躇うのを強引に説得し、 別の集落を襲っている最中のこと。 少年が手慣れたように金目のものを漁っているところを、 屈強な衛兵に取り押さえられてしまう。 同じことを繰り返すうちに、いつしか周辺には黒狼への警戒情報が行き渡っていた……」 現実感の乏しい 止まってみえる世界 友を解き放とうと 駈ける黒狼 けれど心根の優しい彼に 衛兵を傷つける勇気などなく 体ばかりが大きくて無力な自分を責めた... 業を煮やしたルクスが叫ぶ 焦燥と恐怖 不安に顔を歪めて 「早くこいつらを殺せ!」 彼と出会う前繰り返し見た 人間のその表情 ルクセインのそんな顔だけは見たくないと思っていたのに 黒く滾る 矛盾の絡まり合う物語を 強く掻き抱く その最期がそこまで見えてしまっていても 「黒狼は焦り、少年を拘束する衛兵達に無謀にも飛びかかる。 そこに確かな策などなく、ただひたすらに、 夢中でルクセインを守るためだけに。 けれど、それは最初から見透かされていたかのように。 黒狼は、衛兵が構えていた長槍に無惨にも突き刺されて―――」 日々は満たされていた 不器用な少年 口には出さないけれど 見えないところで支え合っていた二人 幸せな物語 その道筋はどこで見失っただろう... もう取り戻せない どれだけ願ったとしても 流れ出る血は正視に絶えず よろめきながらも 親友の元へと辿りつく黒狼 静かに優しく少年の頬を舐めた それは出会ったときと同じように 変わらぬ暖かさで けれど変わり果ててしまった姿で そして生きも絶え絶えに呟いた 「僕を怖がらないでくれて友達になってくれて... ありがとう。とても嬉しかったよ」 「黒狼は怪訝そうな衛兵に向かって唸り声をあげ、 残された力を振り絞って叫ぶ。 『そいつはさらってきたガキだ。 足を引っ張りやがって……早く食い殺してやればよかったぜ』 黒狼はその言葉を最後に、槍で再び一突きされ倒れ伏す。 ルクセインは絶句するように唇を震わせ、 なぜ、と瞳だけで問いかけていた。 黒狼は静かに笑み、そのまま言葉もなく、絶命する」 黒く滾る 短くただ儚い物語の 散り際は淡く 流星のような速度で 傍らにもうひとつ取り残された ルクセインの物語はまだ終わらず 悲痛に傷抱え これからを生きる 「黒狼は途中から少年の意図に気付いていた。 自分という存在を利用して悪事を重ねていたこと。 けれど、出会った瞬間の純粋な喜び。 心許せる友達と過ごす時間の幸福感は黒狼にとって あまりにも大きすぎて……それは決して、偽りのものとは思えなくて。 ルクセインは動かなくなった黒狼に抱きつき、空を仰いで慟哭する。 取り返しのつかない自らの過ちに気付いて。 二人で見上げていた星空。今はそれすらも錆びついて。 壊れかけてみえていた」 「その叫びは果てることなく。けれど、きっともうどこにも届かない」