数え切れぬ程の夜を越えた 孤独の屍 終わらないアポリア──── 何度目の嵐だろう 窓を叩く雨音 響く雷鳴 部屋に映り込む 影<>はいつも一人きり 心まで滲む雨粒 そんなある夜に 扉叩く誰かの声が聴こえた 館の前には 一人の少年霊が諦観抱いた表情で佇んでいた 少年霊の望みは 『人間らしい生活』 "叶えてはくれないだろうか?" 見えざる手に 導かれていくように 少女は少年を受け入れて 微笑みあった 再び始まった誰かがいる毎日 鏡に映る姿が 少女だけだとしても どんな寂しさも誤魔化せた 何度目の月夜だろう 屈託のない 彼<<セス>>の笑顔が見たくて 部屋に散らばった 本を読んで聞かせる度に 胸に灯っていく温もり けれどある夜に のめり込むクーを心配した少女霊が 耐え切れなくなり 二人の間を遮って躊躇いながら囁いた “騙されては駄目。幻惑に惹がれないで ────いつか帰って来れなくなるよ?” 見えざる手に 強く背中を押されて 少女さえ知らない激情に 駆られ叫んだ "どうしてそんな酷いことを言えるの? アナタに何が解るの……!?" 抑えきれずに弾けた感情は 無音にただ歯車を回して 風の絶えた館にもう他の霊は来ない 閉ざされたセカイに二人きりで "もし彼に嫌われて、また独りになったら……?" その先が酷く怖い... 見えざる手に 絡めとられてくように 少女は少年に依存して 囚われていった 夢見た暖かな時間が続くように このまま醒めることなく 眠り続けていたい