清隆：おはよう御座います
姫乃：あれ、兄さん
清隆：あれ、姫乃、今日は部活休みじゃなかったけど
姫乃：そうなんだけどね、立夏さんに呼ばれちゃって
清隆：お前もか
姫乃：え、兄さんも
清隆：あ、俺も急に呼び出し食らっちゃたさ、後でるる姉も来るよ
姫乃：しゃるるさんも
清隆：先に生徒会室に顔を出してから来るってさ
姫乃：じゃ立夏さんってば、公式新聞部全員呼び出したんだね
清隆：春休み中は特に活動しないとか言ってたくせに、どうしちゃったんだろうな
姫乃：さあ、唐突に何が思いついちゃったんじゃない
清隆：立夏さんらしいな
立夏：おはよう、おはよう、皆の衆、集まってるかな
姫乃：立夏さん
清隆：午前中から無駄にテンション高いな
立夏：じゃ出席取るわよ
清隆：あ、いや、誰がいるかなんて最初から分かってるわけだし
立夏：それでも出席を取るの、行くわよ、森園立夏、はい
清隆：自分で自分の名前を呼ばれても
立夏：芳野清隆
清隆：あ、はい
立夏：葛城姫乃
姫乃：はい
立夏：芳野しゃるる、しゃるる？って、あれ、清隆と姫乃だけ？しゃるるは？
清隆：るる姉は生徒会室に寄ってから来るそうです
立夏：ああ、しゃるるてっば、どうして出鼻を挫くかな、せっかくこの私がやる気になってるっていうのにさ
清隆：そういう立夏さんは生徒会室顔出さなくていいんですか
立夏：え
清隆：役員なんでしょ？
立夏：あ、いいのよ、別に今日は行かなくても問題ない日だし、行ったら行ったで会長に扱き使われるだけなんだから、かったるいでしょ？そういう日でも顔出しちゃうしゃるるが律儀すぎるだけ
姫乃：あのいつも強気な立夏さんでも生徒会長さんには弱いんですね
清隆：意外だよな
立夏：そこ、聞こえてるわよ
姫乃：すみません
立夏：会長には公式新聞部立ち上がたとき世話になってるから、頼み事、断りづらいわのよ、でも、安心して頂戴、それはそれ、これはこれよ、公式新聞は中立的な報道紙、公的権利の機関紙には決してならないわ
清隆：ご、ご高説はともかく、立夏さん
立夏：なに
清隆：今日俺たちを呼び出した理由はなんですか
立夏：あれ、言わなかったけ
姫乃：聞いてませんよ、来たら説明するから、いいから来なさい、とにかく来なさいとしか
立夏：ああ、そう言えばそうだったわね、じゃ清隆、ちょっと耳貸しなさい
清隆：なんで俺だけ
立夏：いいから
清隆：え……なんですか
立夏：ふぅ
清隆：やぁ、なんで耳に息吹き掛けるんですか
立夏：はあ、ごめんごめん、ちょっとからかいたくなっちゃて、もっかい耳貸して
清隆：真面目にやってくださいよ
立夏：えへへ、実はね、コショコショコショコショコショコショコショ、ってなわけ
清隆：ぜん、全然わからないです
姫乃：なんですって
清隆：なんでもない、ただ耳元でコショコショコショって言われただけ
姫乃：なんですかそれ、真面目にやってください
立夏：だって、しゃるるが来てからもう一度説明するの二度手間かったるいでしょう
清隆：そのくらいの手間惜しまないでくださいよ
立夏：じゃ説明を始めさせてもらうけど、その前に、私たちの所属する公式新聞部ですが、設立して何年になるか分かる人
清隆：何年も何も、秋に設立したばかりじゃないですか
姫乃：そうですよ
立夏：正確にはかつて存在したという新聞部を私が公式新聞部として復活させたの、本来、非公式新聞部なんかよりずっと由緒正しい部活なんだから
清隆：そもそも公式新聞部って名前自体が変ですよ、明らかに非公式新聞部を意識した名前じゃないですか
姫乃：昔やった新聞部の学園新聞だって風見学園新聞って名前だったって聞いてますよ
清隆：今はあからさまに公式新聞だな、なんか違和感というかなんていうか
立夏：逆にインパクトあっていいじゃない、かつての新聞部は非公式新聞部の暗躍によって潰さてたようなものなのよ、だから非公式新聞部に潰すために設立したってわけ
清隆：の割には知名度でも発行部数でも圧倒的負けてるじゃないですか
立夏：そこよ、まだまだ私たち公式新聞部は駆け出しの弱者、でも、ゆくゆくはこの風見学園で唯一無二の万マス部になる予定なんの、このために必要なのはなに
清隆：設備？
姫乃：予算ですか
立夏：違う違う、それも大事だけど、それ以上に大事なのが
しゃるる：新入部員でしょう
清隆：るる姉
しゃるる：やっほー、隆君、立夏、姫乃ちゃん
立夏：遅いわよ、しゃるる
しゃるる：しょうがないでしょう、立夏が来てくれたら生徒会の仕事ももっと早く終わったんだけどね、まぁ、来ないと思ってたけど
立夏：うん、まぁ、いいわ、ともかく必要なのは金より物より人材なのよ、徐々に部員を増やし、予算も増やし、私たちが本校生になるころにはかなりビッグな部活になっている、そんなビジョンが私に見えるわ
しゃるる：そんなにうまく行くかな
立夏：行くかどうかは私達の頑張り次第、でも、その前に新入部員は必要なのよ
しゃるる：で、そのために何をしようっていうの
清隆：ってかるる姉、なんの話してたか分かるの
しゃるる：だいたい分かるよ、立夏の話そうとしてた話くらいは
姫乃：さすがしゃるるさん、立夏さんとツーカーなんですね
しゃるる：それだけ立夏が単純なのかもね
立夏：うるさいな、邪魔しに来たの
しゃるる：そんなことないよ、さぁ、続けて続けて、新入生を獲得するための妙案を
立夏：まぁ、私達は新聞部である以上、新刊の時期に合わせて新入生歓迎特大号を発行するのは決定事項として
清隆：え、そんな話聞いてないですよ、取材とかどうするんですか、今から始めて間に合いますか
立夏：間に合いますかじゃなくて、間に合わせるの
清隆：うわ、目がマジだ
しゃるる：あはは、こんなときの立夏は誰にも止められないよね
立夏：その話はいいの、それより聞いて、新入生が入って来たら最初のオリエンテーリングのときに部活紹介があるでしょう、そこで、新入生を勧誘するためのプロモーションビデオを流そうと思って
姫乃：プロモーションビデオですか
立夏：そう、最近の新入生にはいきなり新聞を読んでもらうより、先に映像で訴え掛けたほうが興味を持ってもらえるんじゃないかと思うわけよ
清隆：でも、ビデオなんて俺たち上手く撮れないじゃないですか
立夏：そこはもう撮るしかないのよ、ほら見て、もう絵コンテまで描いたんだから
しゃるる：わ、本格的
姫乃：これ、全部立夏さんが描いたんですか
立夏：当然
清隆：多彩すぎる、ていうかこれ空撮とかどうやってやるんですか
立夏：根性で
清隆：無理ですよ、それにこれコンテはすごいけど、どうやって編集するの
立夏：いいからやるわよ、やる前から諦めないよ（ぷに）
清隆：そんなに詰め寄らないでください、胸あたってますよ、胸
姫乃：む
立夏：そんなの知ったことじゃないわ、もっとやる気出して頂戴（ぷに）
清隆：出します、出しますから離れてください
立夏：まったく清隆、変なことばっかり考えてるんだから
清隆：別に考えてなんか
立夏：ともかく、撮影は明後日よ、それまでにここに描いてある衣装を各自用意しておくこと、もちろん新入生歓迎特大号のネタ出しもサボらないでね
清隆：鬼だ
しゃるる：頑張ろね、隆君