はじめて触れた世界は すべてがメロヂィーだった 大きな手に引かれ歩いた 夕風の砂利道 町を見守る 榧の子守唄 いつしか心閉ざし 沈黙の空は鈍色 誰にも言えない 言葉のかたち 月明かり頼りに なぞったピアニッシモ 朽ちてゆこうと 消せない想いが ひそかに溢れる あなたに会いたい 満開に咲いた蛍火を 追いかけて夜空ごと捕まえた 手の中で 眠る記憶 小さく揺れる灯は 命の音色震わせて 遠く遠くまで とどろいた 刻まれて 今も 鳴り止まないピアニッシモ 涙の行方は 明日も知らない ただあの場所で また笑い合いたい 不思議なくらい ささいな場面ほど 手に取るように そばにある だから忘れてもいいよ 忘れないって 分かったから 痛みは いつからか たゆまぬ強さへ 懐かしい音色(うた)と 始まりの靴音 朽ちてゆこうと 消せない想いが 時をかけて行く あなたに会いたい