風 あたたかく 頬を撫ぜる くるりとまわるは 風車 途切れた線路に 停まる世界 甘い蜜を注いで 踏みしめた影が憧れた 痛みを知らない 千切れ雲 錆びつき剥がれた 夢の破片 冷たい 棘が刺さる 空は どこまでも堕ちて やがて花に生まれかわりて 美しき雨に濡れて 乱れ 咲く あなたの横顔に 今 手向け、手折られた 一輪花 誰が為に微笑む 刹那 狂ほしく 手を伸ばしても あなたに触れるたび こころ 摘み取られてく 時 緩やかに 季節移り 誓ひを結ぶは 紡詩 言葉を持たない通り雨に ひとり 傘を差し出す 暗闇の中で夢を見た 光を知らない羽蟲は 飛び立つことさへ恐れながら 冷たい殻にこもる 嘆き 涙落としても やがて 花は朽ち果て消える うつろふ時を想ひて 一夜 舞う 傷ついた両手で 影二つ 切り裂いた 茉莉挿花 棺に閉じ込めた 願ひ叶はなくても ここでいつか 世界を染め上げる 花を一輪 燈す あなたの横顔に 今 手向け、咲き誇る 一輪花 誰が為に微笑む 答へ 知らむまま 散り枯れるとも 柔らかい光と 雨に抱かれて咲く 一輪花 世界を映し出し やっと 巡り逢へたね 終わり