一人で歩(ある)いてたら 声(こえ)をかけられた 誰(だれ)かと思ってら 田中君(たなかくん)じゃないか 何となくダブル背広(せひろ)が 板(いた)についてるね 何だってもう君(きみ)は 課長(かちょう)だって本当 笑顔で別れ(わかれ)たけれど 後に残(のこ)るわびしさ 住みなれた四畳(じょう)半の裸(はだか)電球を めがけてゴムをじく あざやかなこの手つき 財布(さいふ)の中を見たら百円玉三つ これでは今夜もまたラーメンライスなのか 気楽なものたけれど むなしいその日の暮らし 寝むたい目をこすって 出かけて行きます 八時半の電車に乗(の)る いつものあのこ見たさに 真白なマンションのドアをあけたどたん まふしいくらい可愛い妻(つま)が むかえてくれる どうかこんな夢(ゆめ)だけでも 見せてほしい気安(やす)めに