アルベール:ロマンティックなお話ですね。 伯爵:古い友人にマルセイユ出身の船乗りがいましてね。彼からよくその話を聞かされました。 アルベール:きっとそのご友人は恋をなさっていたんでしょうね。 伯爵:その船乗りにはそれは美しい婚約者と気の置けない親友がいました。彼ら三人は幼馴染みで、いつもお互いのことを想い合う仲でした。そう、まるでアルベールさんとフランツさん、そしてユージェニーさんのようにね。しかし、その親友はひそかに船乗りの婚約者を愛していた 。そして、どうしても船乗りの婚約者を自分のものにしたかった彼は、こともあろうか船乗りに無実の罪をなすりつけたのです。哀れなふなのりは十数年もの間、宇宙の果ての牢獄に人知れず繋がれていた。