笠井:ここです。ちょうど午後3時になったころ。僕があの向こうから歩いてきたら、女の子がここにうずくまって何かごそごそやってたんです。 大輔:こんなところで、何やってたんですか? 笠井:背中を向けていたのでよく分からなかったけど。地面に紙袋を置いて、その中に手を突っ込んでました。 大輔:その紙袋って、何か 特徴 ありましたか? 笠井:普通の無地の袋でしたよ。えんじ色の。 大輔:えんじ色。 笠井:こんなところで何やってるんだろうって、気にはなったんですけど。もう待ち合わせの時間だったし、そのまま通り過ぎることにしたんです。そしたらいきなり声掛けられて。 大輔:えっ?その子と話したんですか? 笠井:はさみを持ってないですか?って聞かれました。 大輔:はさみ? 笠井:端ではさみを 貸してくださいなんて聞いたことないですよね。 大輔:本を切っちゃったんでしょうか? 笠井:分かりません。袋の中身も見えませんでした。あっ、あと、あのはさみを返してもらったときに、水滴がついてました。 大輔:水滴? ぬれてたんですか? 笠井:ええ、そうなんですよ。 大輔:はあー。 笠井:で 、それからすぐ彼女は紙袋を持って向こうの方へ走っていきました。