黛:あの!席を…。 老人:いいんですよ。 黛:いえ、よくないです。あなたですよ。あなたに申し上げてます。 古美門:(中国語)你说我吗? 黛:中国の方ですか?あっ…。在日本、老人、優先。 古美門:日本人です。 黛:こちらの方に席を譲って差し上げたらいかがですかと。 古美門:何で? 黛:何でって…。お見受けしたところ、まだお若いですよね。こちらの方お年を召してらっしゃいます。 古美門:だから? 黛:体力のある者が体力のない者に席を譲るのが当然のモラルであり、マナーだと思いませんか? 古美門:思います。 黛:でしたら。 古美門:しかし、若いから体力があり、お年を召してるから体力がないと一様に断じてしまって、いいものでしょうか? 黛:はっ? 古美門:例えば、私は年齢は38だが、あなた、私が重度の心臓病を患ってる可能性を少しでも考慮しましたか? 黛:患ってらっしゃるんですか? 古美門:いいえ。 黛:はあ? 古美門:彼は見た目は60代だが、スポーツクラブに通っており、しかもバッグの年季の入り具合から、かなりのベテランであることが推察される。重厚な大胸筋、引き締まった腹背筋、下腿三頭筋の張り具合は、着衣の上からでもじゅうぶん感じ取れる。貧弱な私よりもはるかに見事な肉体をしていらっしゃる。