[00:00.00] 作曲 : 片倉三起也 [00:23.94]幾つになったら少女と [00:31.20]呼ばれなくなるのでしょう [00:37.60]母さま わたしはもうとうに [00:44.93]大人になってしまったの [00:51.52] [00:52.06]春の節(せっく) [00:55.67]緋毛氈(ひもうせん) 敷(し)いた部屋の [01:00.25] [01:00.88]段飾(だんかざ)り雛(ひな)遊び [01:04.22]ひそかな囁き [01:07.52]しずかに人形(にんぎょう)たちの [01:10.46]目が見下ろす [01:13.55] [01:14.68]庭(にわ)の隅(すみ)で莟(つぼみ)の [01:18.06]桃の木が軋む [01:21.41]傾(かたむ)く屏風(ぼょうぶ)の中へ [01:24.71]吹く風にひとひら [01:27.97]舞って落ちる 紅い影 [01:34.63] [01:41.72]人生はいたづらですか [01:49.00]選べぬおみくじのよう [01:55.57]母(かあ)さま 不幸(ふこう)なあなたと [02:02.81]同じでもいい子でいます [02:09.66] [02:10.17]点(とも)す炎 [02:13.50]仏(ほとけ)さま 浮かぶ お顔 [02:18.03] [02:18.66]白い畳紙(たとうし)の上 [02:21.95]散らばる黒髪 [02:25.05]いつでも優しい指で [02:28.31]結われていた [02:31.19] [02:32.49]果実に巣(す)喰う虫(むし)の [02:35.86]そのおぞましさを [02:39.00]憎み尽くそうとしても [02:42.56]胸だけに仕(し)舞って [02:45.76]少女のままで 在るために [02:52.42] [03:17.46]たとえ貴女 [03:20.49]知っていて [03:22.77]黙(だま)っていても [03:25.69] [03:26.18]段飾り雛遊()び [03:29.46]たおやかな微笑 [03:32.81]わたしはあの人形に [03:35.77]なりたかった [03:39.08] [03:39.48]庭の隅で盛りの [03:43.25]青い枝に今 [03:46.39]甘やかな蜜(みつ)も持たず [03:50.02]固い果肉(かにく)のまま [03:53.11]実(ま)って落ちる 桃ひとつ