[00:02.351]第十三課 擬声語と擬態語 [00:07.366]本文 [00:09.117]次のように、物音や動物の鳴き声を表す語を擬声語といいます。 [00:15.365]「雨戸がガタガタと鳴る。」 [00:19.859]「太鼓をトントンとたたく。」 [00:22.855]「メーメーと羊が鳴く。」 [00:25.617]「ワンワンと犬が吠える。」 [00:29.113]また、次にように、物事の状態や身振りなどを、その感じがよく現れるように示す語を擬態語といいます。 [00:41.616]「蝶がひらひら飛んでいる。」 [00:45.111]「本が箱にぎっしりつまっている。」 [00:49.354]「腕をぐるぐる回す。」 [00:53.111]擬声語と擬態語は音節の組み合わせ方が、規則的な体系をなしているものがたくさんあります。 [01:01.856]また、現代の文章では、擬声語は片仮名で書かれることが多いが、擬態語は平仮名用いられ、表記は一定していません。 [01:15.109]会話(「ポンポン」や「にこにこ」という言葉について、正雄君と恵子さんが話し合っています。) [01:17.352]正雄 「ポンポンと手をたたく。」って言うだろう。なんだと思う、「ポンポン」って。 [01:23.108]恵子 音がしたことでしょう。「はさみでチョッキンチョッキン。」って言うのも、同じだわ。 [01:30.110]正雄 そうだね。「カーンとホームラン。」とも言うね。ほかに、どんな言い方があるかな。 [01:37.617]恵子 「パラパラ雨が降る。」「トントン戸とをたたく。」たくさんあるわ。 [01:43.367]正雄 「パラパラ」「トントン」ね。「ガヤガヤ」「パタパタ」というもあるね。 [01:49.116]恵子 正雄さん、「パラパラ」とか「ガヤガヤ」とか、繰り返す言葉が多いわね。 [01:55.365]正雄 本当だ。ほかに、もっとあるかなね。 [01:59.114]恵子 ええと。「ザーザー雨が降る。」「にこにこ笑う。」これも繰り返しよ。 [02:06.601]正雄 ちょっと待って。「ザーザー」「にこにこ」――。 [02:10.355]両方とも繰り返しには違いないけれど、違うよ。 [02:14.598]恵子 どうして。 [02:16.111]正雄 「ザーザー」や「ポンポン」は音だけれど、「にこにこ」なんていう音はないもの。 [02:21.115]恵子 そうね。「くねくね曲がる。」「ざらざらした紙」なんかも、音じゃないわ。 [02:28.103]音でないものは、なんと言えばいいのかしら。 [02:31.607]正雄 なんかの様子だろう。 [02:33.853]恵子 そう、様子を表す言葉ね。そうすると、音をあらわす言葉と、様子を表す言葉があるのね。 [02:42.604]正雄 恵子さん、さっき「ざらざらした紙」って言ったけれど、「すべすべした紙」というのも、紙の様子だろう。 [02:50.866]恵子 そうね。紙の様子でも、ずいぶん違うわね。 [02:55.123]正雄 指で触った感じが違うんだよ。 [02:57.873]恵子 音をあらわす言葉でも、同じような言葉あるかしら。 [03:03.106]正雄 そうだなあ。 [03:04.859]恵子 あ、これはどう。「トントン戸をたたく。」と「ドンドン戸をたたく。」、ずいぶん感じが違うでしょう? [03:13.861]正雄 うん。弱くたたく音と、強くたたく音の違いだね。 [03:21.600]応用文 [03:24.110]ツルの恩返しーーテレビ放送 [03:28.861]題名の字幕が消えても、静かな音楽は、そのまま続いている。 [03:34.120]画面は、雪の降る村はずれの風景である。背景は、池になっている。 [03:41.351]語り手 むかしむかし、夫婦二人暮らしの農家がありました。 [03:46.356]冬の間は、夫は毎日町へ薪を売り行きました。 [03:51.114]池の岸から、薪を背負った農夫が現れる。すると、けたたましい鳴き声が聞こえる。 [04:00.098]「なんだろう、あの鳴き声は。」 [04:03.864]農夫は、はっと前方を見る。ツルが、罠にかかっている。 [04:09.609]救いを求めるような鳴き声がする。羽ばたきの音が聞こえる。 [04:14.866]農夫の背中の薪を放り出して、かけよってくる。 [04:19.616]「おお、かわいそうに。よしよし、今、助けてやるぞ。」 [04:26.109]農夫は、ツルの足をわなから外す。 [04:29.613]ツルは、農夫に、二度も三度もお辞儀をして、大きく羽ばたき、舞い上がる。 [04:35.869]農夫は満足げに見送っている。 [04:39.608]語り手 雪は、夜になってもやみませんでした。 [04:43.865]その夜、貧しげな農家の薄暗い土間で縄をなっている男。 [04:49.848]……そうです。今日町へ行く途中、ツルを助けてやった、あの農夫です。 [04:55.608]炉端で、縫物をしているなは、その妻です。 [04:59.363]二人とも、無言のままでいる。囲炉裏の火が、ちょろちょろ燃えている。 [05:06.615]すると、若い女の声がする。 [05:09.609]「ごめんくだいさい。ごめんください。」 [05:13.867]「おやっ、誰が来たようだ。」 [05:17.859]「まあ、だれだろう。こんな雪の降る夜更けた。」 [05:23.109]ごめんください。ごめんください。」 [05:26.350]「はあい、今開けてあげるよ。だれだね。」 [05:32.557]農夫が立って戸を開ける。すると、みのを着た娘が現れる。 [05:38.565]「だれだね。お前さんは。」 [05:41.813]「はい、道に迷って、困っている者でございます。お願いです。どうか、ひと夜泊めてください。」 [05:50.813]「ほう、道に迷ったのか。かわいそうに。この雪では道もわかるまい。だが、こんなあばら家では……。」 [06:01.074]妻も、炉端から立って、二人のそばに来る。 [06:05.310]「まあまあ、頭から雪をかぶって……。さあさあ、入って、火におあたりなさい。こんな汚い家だけれど……。」 [06:15.306]「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えまして……。」 [06:20.311]妻が、娘の手を取って、炉端へ行く。 [06:24.812]語り手 そのあくる朝のこと、娘は一番早く起きて、掃除、食事の用意など、まめまめしく働きました。 [06:33.314]そして、朝の食事の時です。 [06:36.810]「お願いがございます。私は、両親に死に別れましたので、親類の家の世話になりたいと思って出てきたのです。 [06:45.810]昨日まで、あちらこちらがしましたが、どうしてもその家がわかりません。 [06:51.320]しばらく、この家に置いていただけないでしょうか。」 [06:55.563]「そんなら、いっそ、うちの子になってもらおうか。うちには、子供がないことだし。」 [07:03.062]「そうそう。こんな貧乏なうちだけど。」 [07:07.562]語り手 そうして、娘は、この家の子になりました。 [07:11.806]さて、その夜、娘は、夫婦の前に手をついて言いました。 [07:17.558]「お父さん、お母さん、お願いがございます。」 [07:22.311]「ほう、なんだい。」 [07:25.305]「私は、はたを織ることができます。どうぞ、機織り場を作ってください。」 [07:31.306]「そうか、それはありがたい。それでは、早速機織り場を作ってあげよう。」 [07:38.300]「もう一つ、お願いがございます。……私が機織り場にいるときは、決して、中でをご覧にならないでください。」 [07:48.064]「それはまた、どういうわけで……。」 [07:51.318]「そのわけは、どうかお聞きにならないでください。」 [07:55.559]「そうか、お前が見るなと言うなら、わしは見ないよ。」 [08:01.556]「私も、決して見ないことにしますよ。」 [08:06.070]語り手 農夫は、さっそく、家の裏に、機織り場を作りました。 [08:11.308]機織り場ができあがると、娘は夜もおそくまで、機を織りました。 [08:17.812]機織り場の小屋。トンカラリ、トンカラリと、機の音がしてくる。 [08:24.314]語り手 三日目の夜、娘は、機織り場から出てきて、一反の織物を夫婦の前に差し出しました。 [08:33.325]「やっと、一反、織りあがりました。」 [08:37.070]「まあ、なんとみごとなものだろう。見たことも、聞いたこともない、見事な織物。」 [08:44.812]「これは、何という織物かね。」 [08:48.823]「はい、綾錦と申します。これを町へ持っていって、売ってください。 [08:54.814]きっと、良い値段で売れます。私は、これからも、毎日織り続けます。」 [09:02.306]語り手 農夫は、あくる日、綾錦を町へ売りに行きました。その日の夕方のことです。 [09:09.806]妻が、一人で、炉端で縫い物をしている。機織りの音が聞こえてくる。 [09:16.804]「どう考えても不思議だ。あんな粗末な系で、どうして、あのような見事な織物ができるのだろう。 [09:26.063]一目、覗いてみたいものだ。……いやいや、のぞいてはならぬと言われた。 [09:32.311]……でもたった一目、覗いてみたい。……そうだ。「こっそりのぞいてみよう。」 [09:39.312]妻が、そっと機織り場に近づき、窓から中をのぞいたとたんに、「あっ」と驚く。 [09:46.813]機織り場の中でも、「あっ」と叫ぶ娘の声。 [09:50.819]妻は、転がるようにして、家の中に駆け戻り、ぺたんと座ったまま、大きな息をしている。 [09:58.551]そこへ、夫が帰ってくる。 [10:01.065]「おい、喜んでくれ。あの綾錦は、びっくりするほどの高く売れたぞ。」 [10:07.513]「あの、あの、娘は、ツル……ツルだよ。機織り場中を覗いてみたら、ツルが機を織っていた。」 [10:18.012]「えっ、ツルだって。……なんで、機織り場の中を見たのだ。」 [10:24.264]「ご、ごめんなさい。一目、見たくて、見たくて……。」 [10:29.512]間も無く、娘が機織り場から出てきて、夫婦の前に両手をつき、泣きながら語る。 [10:36.778]「実は、私は、この間助けていただいたツルでございます。 [10:43.022]御恩返しに、一生、おそばで働こうと思って、参ったのでした。 [10:48.520]綾錦は、私の胸の毛を使って織ったものでございます。 [10:53.008]けれども、ツルの正体を見られたので、もう人間の姿でいることが、出来なくなりました。 [11:00.019]それでは、お別れしなけばなりません。どうぞ、お二人とも、いつまでも達者で……。 [11:08.509]娘は、泣きながら外に出ていく。 [11:12.509]夫婦は、慌てて、その後を追う。娘の姿ぱっとツルに変わる。 [11:18.714]ツルは、一声、悲しげに鳴いて、舞い上がり、家ノ上を二、三度回ってから、夕もやの中に見えなくなる。 [11:27.719]音楽と共に「終わり」の文字が出る。(東京外国語大学付属日本語学校編「日本語」による) [11:32.473]単語 [11:34.466]擬声語 擬態語 物音 鳴き声 雨戸  ガタガタ(と/する) 太鼓 [11:43.449]トントン(と) メーメー(と) 羊 ワンワン(と) 犬 吠える [11:52.958]蝶 ひらひら(と) ぐるぐる(と) 音節 規則的 体系 なす [12:01.463]文章 表記 一定 ポンポン(と) 正雄 恵子 はさみ チョッキン [12:11.195]カーン(と) ホームラン(home run) パラパラ(と) ガヤガヤ(と) [12:16.705]パタパタ(と) ザーザー くねくね(と/する) ざらざら(と/する) [12:21.958]すべすべ(と/する) 指 触る 鶴 恩返し 字幕 村はずれ 語り手 [12:32.469]二人暮らし 薪 農夫 けたたましい 前方 罠 罠にかかる 救い [12:41.705]背中 外す 羽ばたく 舞い上がる 見送る 薄暗い 土間 縄 なう [12:53.211]炉端 縫い物 とも 無言 囲炉裏 ちょろちょろ(と) 蓑 泊める [13:02.698]あばら家 甘える 明くる まめまめしい 親類 いっそ 貧乏 機 [13:13.206]織る 羽織場 小屋 トンカラリ 反 差し出す なんと 見事 織物 [13:25.202]綾錦 こっそり(と) そっと 駆け戻る ぺたんと 息をする なんで [13:33.965]胸 正体 追う 一声 悲しげ 夕もや [13:41.458]