第八課 ゴミ 本文 ごみの処理は多くの国で問題になっている。 ほかの国にごみを運んで、処理を頼む場合もあるそうだ。 日本でも最近、関東地方のある県が、遠く東北地方にまでごみを運んで処理を頼んだが、 話し合いがうまくいかなくてまだ問題は解決していないそうである。 特にビニールやプラスチックのゴミは処理が難しく、地中に埋めることが多いが、埋める場所も限界に近づいている。 最近の『後方東京都』に、「各家庭から出るゴミは、 一人ひとりのちょっとしたどりょくと気づかいで減らすことができます」という記事が出ていた。 また、今朝の新聞には、北海道のある町の場合についての投書が出ていた。 ゴミを出す時は乾電池、生ゴミ、固形燃料など六種類に分けて出す。 乾電池は市中の数か所にあるポストに捨てる。生ゴミは処理して、老人のための施設で燃料として使うそうである。 「ゴミを細かく分けて出すのは、最初は面倒くさいですけど、そのうちになれてしまいます」と投書者は言う。 このような捨て方の工夫も大切であるが、ゴミをあまり出さないようにすることも必要であろう。 買い物をするたびに包み紙を捨てなければならない。 贈り物をもらうと、きれいな包み紙の中にまた箱や缶があって、結局、中のものと同じぐらいのゴミが出る。 しかし、きれいな包み紙がなければ、商品は売れないのが現実だ。 「一人ひとりの努力」だけでは不十分である。商品の流通機構そのものをかえなければ、ゴミ問題は解決しようもない。 会話 (一)(管理人(男性)と、マンションへ引っ越してきた女性の会話) 女 あのう。 男 はい。 女 ゴミはどこへ出しますか。 男 地下にゴミ捨て場がありますから、そこへ出してください。 女 いつでもいいですか。 男 生ゴミや紙なんか、燃えるゴミはいつでもいいです。 女 はい。 男 でも、必ずバケツに入れて、ふたをしてくださいよ。 女 はい。 男 蓋をしないと、猫が中のものを出して食べますから。 女 はい、分かりました。 男 燃えないゴミ、プラスチックやなんかは、水曜日に建物の裏においてください。水曜日だけですよ。 女 はい。 男 空缶と瓶とかもね。 女 ええ。あの、乾電池は? 男 乾電池? 女 前にいた町では、乾電池を捨てるポストがいくつかあったんですが。 男 さあ、この辺にはないと思いますが。 女 ゴミは細かく分けて出したほうが、処理がらくなんですね。出すほうは面倒くさいですけど。 男 まあね。 女 物が豊かになって、ごみが増えるから、処理が大変なんだそうですね。 男 そうですか。 女 お中元やお歳暮の時なんか、箱や包み紙いっぱいになってしまって困りますね。 男 困りませんね。 女 え? 男 うちはもらわないから。 女 あ、そうですか。じゃ、また。 (二)(夫と妻がレストランで食事をしながら話している。) 夫 あ、そんなに残すの。 妻 うん、多いもの。 夫 そういうふうに残す人がいるから、ごみが増えるんだよ。 妻 じゃ、ゴミにしないために、苦しくても残さないで食べなさいと言うの。 夫 僕はそうしている。 妻 だから太るのよ。多い時は残さなきゃだめよ。 夫 ゴミ処理は現代文明の大問題なんだ。ごみを出さないように努力するのが、現代人の義務だ。 妻 じゃ、言いますけど。あなたがいつも買ってくるラジオやレコードやカメラはどうなの。 夫 どうって? 妻 買ってもあまり使わないんだから、ごみと同じよ。うちじゅうゴミだらけよ。 夫 それから、君の洋服だって同じだよ。 安いからと言って買ってもほとんど着ないんだからゴミと同じじゃないか。 妻 そのうちに着るわよ。 夫 今着ないものはゴミと同じだから、全部捨てれば、うちが広くなるよ。 妻 あなたがおもちゃを捨てれば、私も洋服を捨てるわ。 夫 でも、あまり捨てると、市役所がゴミ処理に困るだろうな。 妻 そうね。じゃ、捨てないことにしましょう。(水谷信子著『総合日本語』による) 応用文 地球の自然を守ろう 1972年、スウェーデンのストックホルムで世界で初めて「国際人間環境会議」開かれ、 多くの国が参加して、地球の自然を守るために国際的に協力しようよいう話し合いが行われた。 それ以来、国際会議は定期的に開かれているが、効果はなく、地球の自然破壊は進む一方である。 早急に手を打たなければならない、人類は深刻な問題を抱えているのである。 例えば、アフリカでは砂漠が一日に15メートルずつという非常な速さで広がっているという。 3000年もの間、緑豊かな美しい土地だった所が1970年ごろから始まった急速な砂漠化で、 今ではすっかり砂に埋もれてしまっている。 湖も池も消え、農作物はもちろん、家畜のえさになる草も育たない。 この砂漠化を引き起こしたのはほかでもない、私たち人間である。 人が木を伐り、家畜に草を食べさせる速さと量は、草木が自然に芽を出し、育つ速さと量とは比べものにならない。 アジアの国々でも、人が木を切り、森林を破壊するということによって、自然環境の変化が起きている。 緑のなくなった土地では、少しでも雨が降ると、土が流されて、川底にたまり、皮を浅くする。 その結果、毎年洪水が起こるのである。 また、地球を取り巻く空気の問題も無視できない。 人々の生活から出される二酸化炭素やフロンガスは気温を上げる。 車や工場から出される排気ガスは空気を汚し、その汚れた空気も自然破壊につながっている。 恐ろしい酸性雨が生み出され、木々や農作物は枯れ、土地そのものも破壊されてしまうのである。 酸性雨に汚された川や湖では魚が生きられない。 魚も植物も生きられない地球では、人間も生きられないはずである。 人間は自分たちの具合ばかりを考えて、地球を自分たちが住めない場所に変えてしまっているのだ。 生活が少しでも便利になるようにと工業化を進められるだけ進め、 地球の緑をエネルギーに変えて消費し続けてきた国々もあれば、 人口増加に伴って人々の生活のために木々を切り倒してきた国もある。 このどちらもが自然破壊をもたらしたことは明らかである。 地球の環境問題に関する国際会議があちらこちらで開催され、新聞やテレビでもそのニュースが報道されている。 今何か対策を立てて解決を急がなければ、環境破壊はどんどん拡大し、手遅れになってしまう。 この大切な地球を守って、住みよい場所にできるかどうかは私たち次第なのである。(荒井礼子ほか『中級から学ぶ日本語』による) 単語 関東地方 県 東北地方 話し合い 解決 ビニール(vinyl) プラスチック(plastic) 地中 広報 努力 気遣い 減らす 北海道 乾電池 生ゴミ 固形 燃料 数か所 面倒くさい 投書者 包み紙 缶 商品 事実 不十分 機構 管理人 引っ越し 捨て場 燃える バケツ(bucket) 空缶 瓶 文明 現代人 義務 市役所 ストックホルム(Stockholm) 破壊 早急 手を打つ 人類 砂漠 砂漠化 砂 埋もれる 湖 農作物 餌 家畜 育つ 草木 芽 森林 川底 たまる 洪水 取り巻く 空気 無視 二酸化炭素 フロンガス(flon gas) 気温 汚す 汚れる 酸性雨 生み出す 木々 枯れる 植物 国々 増加 切り倒す 明らか 開催 対策 拡大 手遅れ 次第