第五課 着物 本文 日本女性の着物姿はどの国にへ行っても珍しがられるようだが。 日本国内においても、そうした事情はあまり変わらなくなってきている。 女性に限らず現代の日本人は洋服が一般的で、着物を日常的に着るのは茶道、 華道といった日本の伝統芸能のお師匠さんや落語家、 力士などの特殊な職業の人に限られ、他の人とっては結婚式、成人式、 正月などの儀式に着る装飾的なものになってしまっているためだ。 したがって、自分で着物を着られる人も少なくなり、 若い女性の中には着付けを「嫁入り修行」の一つとしているくらいである。 洋服に対して在来の日本の衣服、つまり和服を総称して着物というが、 一般的には羽織やコートを除いた、いわゆる長着を指すことが多い。 明治時代に入ると、徐々に洋服化が進み、一般にも普及した。 現在では、男性も女性も世界の一流デザイナーのプレタポルテを身に着けることが特別でないほど、 すっかり洋服が定着している。 その需要の高さから、ファッションショーの舞台もパリ、 ニューヨークから東京へ移りつつあると言われるほどである。 会話 李 鈴木さん、今日は着物を着た女性をたくさん見かけますね。どうしてすか。 鈴木 今日は成人の日なんです。国民の祝日の一つで、 この一年間に満二十歳になった人たちをお祝いする日です。 女性は晴れ着を着て式典に出席した後、思い思いに街を歩いているんです。 李 こんなにたくさんの人たちが着物を着ていて、本当にきれいですね。 鈴木 若い女性はだれでも成人式に晴れ着を着るのを楽しみにしているんです。 若い女性にとっては青春時代の一つの夢なんです。 李 そうでしょうね。ところであの着物は袖がずいぶん長いんですね。 鈴木 あれは振袖といって、結婚前の女性の晴れ着です。 李 結婚した女性の着物のそでは長くないんですか。 鈴木 はい、尤も短いんです。女性の着物は着る人が未婚者が既婚者かによって、 あるいはどういう場合に着ていくかによって、布地、模様、色合い、仕立て方などが違います。 李 そうですか。それからあの背中のところの結び目もとてもきれいですね。 鈴木 帯は着物の体に固定するために使いますが、背中のところの結び目は着物を着た時の、 アクセントと装飾にもなります。後ろから見たときにいっそう美しく見えるわけです。 李 日本の女性はどんな時に着物を着るのですか。 鈴木 昔は普段着でしたが、今では、お正月、成人式、大学の卒業式、結婚式、 お茶やお花の会などが主な機会になりました。 李 結婚式の着物はどんな特色がありますか。 鈴木 結婚式に花嫁が着る豪華な着物は打ち掛けといいます。 これは絹の布地に金、銀の箔を織り込んだ金糸、銀糸で刺繡されています。 打掛を着る時には、髪型も伝統的な日本髪にします。 李 着物は世界でも最も美しい民族衣装の一つですね。 鈴木 お褒めにあずかって嬉しいです。 着物の美しさは色や模様などによってかもし出される優雅な雰囲気によると言われています。 李 それは素晴らしいことですね。ところで着物は簡単に着られるのですか。 鈴木 いいえ、これがかなり難しいんです。洋服は着る人の体型に合わせて作られていますが、 着物は着付けによって体に合わせていくのです。 それで着方が難しくて、自分一人で着物ことができなくなっています。 ですから、特に正装するときは専門の着付け師に依頼しなければならないんです。 大抵は美容院でしてもらいます。 李 男性も着物を着るんですか。 鈴木 ええ、でも、着物を着る男性はそんなに多くありません。 それも結婚式、お正月などの正装として着る程度です。 李 男性の着物にはどんな特色があるんですか。 鈴木 男性の着物は青色か茶色系の地味な色合いで、 正装には着物の上からはかまをはき、羽織を重ねて着ます。 李 鈴木さんはよく着物を着られますか。 鈴木 いいえ、ほとんど着ません。夏にお風呂の後、時々浴衣を着ることがありますけれど。 浴衣は木綿地に簡単な模様を染め抜いた着物の形のくつろぎ着なんです。 李 ああ、それからこの前、旅行のときにホテルで私も着ました。 鈴木 そうそう、浴衣を着る機会がもう一つあるんです。 日本には真夏に、お祭りや盆踊り大会などがあります。 そのとき、皆で浴衣を着て、民謡に合わせて踊りを楽しむんです。 李 それは本当に楽しいでしょうね。 応用文 女も男も金ぴか ―時ならぬゴールドラッシュ 世の中がギラギラしてきている。女性の耳から、 腕、腰、そして足首から靴の先にまで金色のメタリック・アクセサリーがあしらわれ、 若い男も負けじと胸元をきらりと光らせる。 いま流行の紺ブレ(紺色のブレザー)でも金ボタンがもてはやされ、 地味な銀ボタンは敬遠されがち。パチンコの景品にも純金のインゴットが登場した。 平和時代ほど金は売れるという。 十九世紀の米国ならぬこの「平成のゴールドシップ」は日本の豊かさと平和のシンボル? 先ず原宿や六本木といったファッショナブルな街でありいやらしくない程度に道行く若い女性を観察していただきたい。 耳のピアスイヤリングはどれも大きい。しかもほとんどが金ピカ。 小さな金のピアスを片方の耳だけで三つもつけているピアス大好きギャルもいる。 首には金のネックレスが一本が二本、なかには幾重にも巻き付け、腰には金色のメタリックのベルト。 足首にはアンクレットといわれる金の輪を、セクシーさを強調するかのようにフィットさせている。 視線をもっと下げると、金の飾りがついた靴の多さにも気が付く。 これでもかこれでもかといった金ずくめなのだ。 百貨店のアクセサリー売り場のも変化が出てきた。 一階正面入り口に近いところは、これまでは高級婦人バックやネクタイ売り場というのが通り相場。 それが今ではアクセサリー売り場がドーンと場所を占めている。 夕方近くになると、この売り場が若い女性で埋め尽くされるほどの賑わいぶりなのだ。 小田急百貨店のアクセサリー売り場ではこの三年、売り上げが毎年二桁の伸びを見せているそうだ。 「金ブーム」に悲鳴を上げているのは 金ボタンメーカー。 折からの世界的な紺ブレブームと重なって生産が追いつかない状態。 金ボタンは東南アジアなどでも生産されているが、洗濯すると黒ずんだり、メッキの色が不揃いなものが多い。 そこにいくと日本製は色、形とも均一で、メッキに色褪せもなく、ひっぽりだこ。 また、紺ブレブームは若者がリード役立ったが、ここにきて、中年の男女にも広がりを見せている。 伊勢丹婦人服の課長は「ブラウスやカートなど紺ブレが合わせやすく、 金のあしゃれっぽさもミセスを引き付けている。今がピークかもしれないが、紺ブレ人気は当分続きそう」と見ている。 銀座にゴールドジュエリーの直営店を出店している住友貴金属事業部の部長は 「野球選手がユニホームからチェーンを覗かせているのが格好良く見え、男性も金製品を身に着けるようになってきた。 若い女性については「みつぐ君」からプレゼントという背景も見逃せない」という。 金ブームの行方は「みつぐ君」の懐具合にもかかっているようだ。 単語 茶道 華道 成人式 儀式 装飾 着付け 嫁入り 修行 在来 衣服 総称 羽織 長着 徐々に デザイナー(designer) プレタポルテ(pret a porter) 晴れ着 式典 思い思い(に/の) 青春 袖 振袖 未婚者 既婚者 布地 模様 色合い 仕立て 結び目 帯 固定 アクセント(accent) 豪華 打ち掛け 絹 箔 織り込む 金糸 銀糸 刺繡 髪型 日本髪 与る かもし出す 優雅 体形 正装 着付け師 美容院 茶色 地味 袴 浴衣 木綿地 染め抜く 寛ぎ 真夏 盆踊り 大会 金ぴか ならぬ ゴールドラッシュ(gold rush) 足首 金色 メタリック・アクセサリー(metallic accessory) あしらう 胸元 きらり(と) 紺ブレ(~blazer) 紺色 ブレザー(blazer) もてはやす 敬遠 パチソン 景品 純金 インゴット(ingot) 平成 原宿 六本木 ファッショナブル(fashionable) いやらしい ピアス(pierced earring) 片方 ギャル(gal) ネックレス(necklace) 幾重 巻きつける メタリック(metallic) ベルト(belt) アンクレット(anklet) 輪 セクシー(sexy) フィット(fit) 視線 婦人バック(~bag) 通り相場 埋め尽くす 小田急 百貨店 桁 悲鳴を上げる 折から 東南アジア 黒ずむ めっき 不揃い 均一 色あせ 引っ張りだこ リード役(lead~) 伊勢丹 婦人服 課長 ブラウス(blouse) スカート(skirt) お洒落 ミセス(Mrs) ピーク(peak) ゴールドジュエリー (gold jewellery) 直営店 出店 貴金属 事業部 部長 ユニホーム(uniform) チェーン(chain) 覗く みつぐ みつぐ君 見逃す 行方 懐具合