第四課 日本料理 本文 近年、日本人の食生活はバラエティーに富み、多種多様になってきた。 街にはいろいろな料理店が軒を並べている。 家庭でも豊富な食材が手に入るようになり、 家族の好みでいろいろな料理が作られ、食卓を飾るようになった。 伝統的な日本料理を和食という。 日本料理には、家庭での日常の食事だけでなく、 伝統的な行事食や宴席料理などがあり、依然として、 現代の日本人の生活の中に生きている。 外国では、すし、天ぷら、すき焼などが代表的な日本料理として知られているが、 日本料理の特徴から言えば、むしろ行事食や宴席料理のほうが伝統料理の色彩が濃い。 昔から、日本料理を「五味五色五法の料理」と言ってその特徴を表現する。 「五味」とは、甘、酸、辛、苦、鹹のことを、「五色」とは、白・黄・赤・青・黒のことを、 「五法」とは生・煮る・焼く・揚げる・蒸すという料理法のことを指す。 近年、日本料理は栄養面から改めて見直されてきている。 特に外国ではダイエット食として注目され始め、理想的な食事の一つとして評価する人もいる。 確かに欧米型の食事と日本料理を比べてみた場合、欧米型の食事は肉類、 乳製品などを中心とした高カロリー、高脂質であるのに対して、 日本料理は天ぷらくを別にすれば、油を使った料理が少なく、低カロリー、 低脂質であり、かつ栄養のバランスもよい。 会話 鈴木 今日は李さんも、日本酒を召し上がってはいかがですか。 李 ぜひいただきます。私は酒には目がありませんので。 鈴木 私もですよ。 李 日本酒ってどのぐらい強いのですか。 鈴木 十五度ぐらいです。さあ、お料理を召し上がってください。 李 ああ、きれいですね。これは何ですか。 鈴木 この料理は「先付」といいます。前菜に当たるものです。 タイの肝の煮付けと菊菜のひたし、それに芋を煮たものです。 李 料理の配置がうつくしですね。 鈴木 日本料理は季節の素材の持ち味を生かし、器と料理の色彩を調和させます。 それに季節感を出すことを大切にしているんです。盛り付け方もたいへん重要です。 李 何か決まった盛り付けのパターンがあるんですか。 鈴木 ええ、丸い料理は角形の器に盛り、 逆に四角い料理は丸形の器に盛るのが基本になっています。 李 今度はスープのようですね。 鈴木 そうです。ハモと松茸、人参、三つ葉の汁碗です。 一種独特の香りは、柚子という果物の皮が碗の中に少し入っているからです。 李 皆、今の季節にとれるものですね。 こうして季節感を出しているんですね。 鈴木 そこが大切なところなんです。 さあ、ご存じの刺身です、きょうはタイ、伊勢海老、イカを盛り合わせたものです。 李 たいへんおいしいですね。 鈴木 次は「はし休め」といって、口直しのあっさりした料理です。 山芋とご飯を蒸して、蟹の甲羅に盛ったものです。 李 日本料理の味付けにはどんなものを使うんでしょうか。 鈴木 塩、醬油、酢、砂糖のほかに、旨味を出すためにカツオ節、昆布、椎茸などを使います。 一般的には、あまりごてごてした味付けはしません。さあ、これが焼き物です。 李 ああ、これは松葉を敷き詰めたんですね。 鈴木 そうです。これはカマスを焼いたものです。上に乗っているのは生ウニです。 李 本当に見事な飾りつけですね。食べるのが惜しいようですね。 鈴木 これらの料理は私たちが食べるためにここに出てきたんです。 どうぞ、遠慮なさらずに。次はカブと穴子の炊き合わせです。 李 なかなかおいしいですね。 鈴木 さあ、メニューのしめくくりは汁物です。 ますし汁にシイタケ、かまぼこなどを入れたものです。ご飯をどうぞ。 ご飯はたいてい汁物と香の物と一緒に、終わりに出します。 李 今日は立派な日本料理をごちそうさまでした。本当に楽しかったです。 でも、日常に召し上がる家族料理はこれとは違うと思うんですが。 鈴木 ええ、家庭では素朴な味わいの料理を作ります。日本では「おふくろの味」と呼ばれます。 家庭料理の基本はご飯とおかずに汁と漬物を添えたものです。 李 低カロリー食として日本料理のよさが最近、中国でも注目され、食べる人が増えてきました。 今日はどうもありがとうございました。 応用文 自然食ブーム ―「無農薬」を信じる消費者 「食べ物」にいろいろなブランドが出くれるようになって、 いま流行「有機・無農薬」。健康ブームも手伝い、需要はうなぎ登りだ。 作る者、食べる者、両者を結ぶ者それぞれが信頼し合って初めて生まれる収穫物。 そこにさまざまな触手が伸び、群がり、まがいものがまかり通る。生産と流通の現場をルポした。 「洋ナシのジュースを作ってくれないか。」 岩手県のある開拓村で農薬や化学肥料なしの野菜作りに取り組んでいる沼沢さんの自宅に昨年秋、 電話がかかった。相手は東京で「自然食品」の店を経営する社長。 農薬のかかった果物は皮ごと口にすると、舌にピリッとくる刺激を感じる。 しかし、無農薬の果物の栽培はとても困難なことである。 開拓村は山の中の標高千メートルの高地にある。沼沢さんは牧畜の傍ら、 県内、近県の約70世帯で「岩手有機農産物ネットワーク・チャンス」を作り、代表でもある。 信頼を受けた沼沢さんは県南部にあるナシ産地の農協から低農薬の洋ナシを購入。 県内の缶詰工場で百パーセント果汁ジュースに加工し、社長に送った。 十一月、都内の駅前商店街の自然食品店にジュースが並んだ。 真っ白い缶に一枚のラベルが張ってある。「岩手無農薬有機農法洋梨」と記されていた。 今春上京し、不正を知った沼沢さんは社長に抗議したというが、 それから半年近くが過ぎた九月末まで、店頭には白い缶が並べでいた。 毎日新聞の取材にこの社長は「ラベルはミスプリントだった。 張り替えるのも手間なので、そのまま売ってしまった。 まずかったと思う」と事実を認め、商品の店頭から引き揚げた。 十年前から、一切の化学肥料を使うのやめにしたという沼沢さんは 「農家が大型機械や農薬などを買うために借金を重ねる悪循環を断ちたかっただけ」と動機を語る。 無農薬で野菜を作るのは難しい。だからグループにも強制はしない。 農家を苦しめる無農薬には意味がないと思うからだ。 ただ「使ったら使ったと書くことが最低のモラル」という。 しかし、今も「チャンス」はこの会社と取引を続けている。 「取引をやめようと何度も思ったが、よそに比べるとまだまし。 売ってけれなきゃ、農家はどうにもならないし……」 店には「チャンス」の大きな幟が掲げられ、消費者はそのブランドを信じ、自然食を求める。 単語 多種多様 軒を並べる 食材 和食 宴席 依然 天ぷら 色彩 濃い 揚げる 見直す 注目 理想的 欧米型 肉類 高カロリー(~calorie) 高脂質 先付 前菜 肝 煮付け 菊菜 浸し 芋 配置 素材 持ち味 器 季節感 パターン(pattern) 角形 四角い 丸形 盛る ハモ(鱧) 人参 三つ葉 汁碗 柚子 刺し身 伊勢海老 イカ 盛り合わせる 口直し あっさり(と/する) 山芋 甲羅 味付け 酢 旨味 鰹節 昆布 椎茸 ごてごて(と) 焼き物 松葉 敷き詰める カマス ウニ(海胆) 飾りつけ 惜しい カブ 穴子 炊き合わせ 締めくくり 汁物 添える 自然食 無農薬 消費者 有機 うなぎ登り 信頼 収穫物 触手 群がり まがいもの まかり通る 流通 ルポ(reportage) 洋ナシ 岩手県 開拓村 化学肥料 沼沢 ぴりっと(する) 栽培 標高 高地 牧畜 傍ら 県内 農産物 ネットワーク(network) 依頼 産地 農協 缶詰 果汁 ラベル(label) 今春 上京 不正 抗議 ミスプリント(misprint) 張り替える 手間 店頭 引き揚げる 一切 大型 借金 重ねる 悪循環 断つ 強制 最低 モラル(moral) 取引 よそ どうにもならない 幟 掲げる