第十八課 映画 土曜日の午後、 学校が終わってから 日本の友だちと映画を見に行きました。 入場券を買おうと思っていると、 友だちが先に行ってわたしのも買ってくれました。 映画館にはいりました。映画はもう始まっていました。しばらく後ろに立って見てい どこかに席はないかと思って、 辺りを見回しましたが、暗くて何も見えません。 しかたがないので、しばらく後ろに立って見ていました 目が慣れてくるにしたがってあたりが少しずつ見えはじめました。 真ん中あたりに、空いている席が二つ見つかりましたので、 急いで行って友だちと並んで腰掛けました。 はじめはニュース映画でした。 わたしの国のこともニュース映画に出てきました。 なつかしい国の景色が映った時は、 なんとも言えない気持ちになりました。 ニュース映画の次は日本の劇映画でした。 わたしの知っておる女優も出てきました この映画は現代のものでしたから、 だいたいの筋は分かりました。 しかし、ことばが速いので、 ところどころ聞き取ることができませんでした。 日本人たちはことばを聞いただけで、 おもしろがって笑っています。 しかし、わたしには、どんなことがおもしろいのか分かりませんでした。 それでも、以前と比べると、 、だいぶ分かるようになりました 日本に来たからには 早く日本の人と同じ用に楽しみながら 映画を見たり聞いたりすることができるようになりたいと思います。 李さん、こんにちは。 こんにちは。 午後は何か予定がありますか スーパーへ行って買い物をしてこようと思っています 佐藤さんはどういう予定ですか。 映画を見るつもりです。 いっしょに行きませんか。 何の映画ですか。 日本の劇映画です。 みたいですね、切符が手に入りますか 入ります。 それじゃ、行きましょう。 どこで上映しているんですか 新宿の映画館です。 映画は何時からですか。 二時半からです。 二時二十分までに映画館へ来てください。 入口で待っています。 はい、承知しました。 映画を見終わって とてもいい映画でしたね。 ええ。でも、佐藤さん、映画にくわしいんですね あんな難しい俳優の名前をちゃんと覚えているんですね。 そうでもありませんよ。 あの映画はずっと前から見たいと思っていたんですよ。 ヒロインを演じた女優さん、ほんとうにあの役がふさわしかったですね ええ、そうですね。 きれいで…魅力的で… そういえば、彼女はあの映画で何か賞をもらったらしいですよ。 そうですか。 それから…子供に甘い、 あの男優の父親の役もよかったですね。 日本語に弱くて、よく聞き取れなかったんですが、 あのやさしい話し方は印象的でしたね。 ええ、そうですね。 いかにも日本らしいストーリーでしたね。 応用文 天平の甍――シナリオ ナレーション 今から千二百年前の天平年間、 唐から高僧を日本へ招くという任務を与えられた留学僧一行は、 半年かかって、やっと揚州に着いた。」 地図 雲岡から揚州に至るまでの道を、白い線で示す。 揚州?川の橋 普照たち、船から岸へ上がると、 この国の商人や外国人の群れの中を通り 橋へ上がって行く。 音楽?終わる) ナレーション 揚州は当時、海外貿易に栄える国際都市であった。 道抗、立ち止って指す。 寺は、あの丘の上です。 大明寺の丘 道抗と普照たちが上がって来る。 門の中へ入る。 鑑真の居間 渾天儀など珍しい物に鑑真の博学ぶりがうかがわれる 香炉からゆるやかに煙がただよっている。 道抗のうしろに並んで座っている普照たち 鑑真は今まで経典をひもといていたらしく ひろげられた一巻を静かにまきもどしていく こちらが先程お耳に入れました 日本の僧たちでございます。 奈良、興福寺の僧、栄叡と申します。 同じく大安寺の僧、普照でございます。 私も大安寺でしばらく修業しておりました、 玄朗と申します。 お弟子たちのうちより、ご推薦をよろしく……」 と鑑真を見つめて言う。 静かにうなづく鑑真。 講堂 集まっている弟子たち、三十数名。 長老の座に座っている鑑真。 普照、栄叡、玄朗?道抗たち、その傍に座って控えている。 ナレーション 「主だった鑑真の弟子たちが、各地の寺からあつめられた 広く、ほの暗い講堂を、重苦しい沈黙が支配している 鑑真は、一同に静かな目を向けていたが 「祥彦はどうだ。」 祥彦と呼ばれた僧は、顔をあげ、 日本へ行くには、広い海を渡らねばならず 百人のうち一人も辿り着かぬと聞いております その海を、この人たちは渡って来ているではないか 徳清が鑑真に向い しかし、大勢の者が 日本へ渡るとなれば、国は許しますまい。 普照たち、緊張している。 鑑真はしばらく口をつぐんでいたが やがて、自分にも語りかけるように、 お前たちも知っている通り、 百十余年前、求法の熱に燃える若い玄奘三蔵は 国の許しを得ぬまま、西のインドをめざして、長安を旅立った。 聞いている栄叡たち。 ここにいる日本留学僧たちは わが国の求法僧たちがインドへ向ったと同じように、 仏典と授戒師を求めて、 わが国へ来られたのだ。 この求めに応えて、 誰か日本へ渡り 戒律の法を伝えるものはないか。」 鑑真は左右の弟子たちをかえりみる。 弟子たちは黙って答えない 普照、栄叡たちは、息をのんで弟子たちに目をそそぐ。 どうか、私と一緒に日本へ渡ってほしいのだ。 どなたか、お願いします。 (頭をさげ)この通りです どうか日本へ、私どもと一緒に、どうか 弟子たちはやはり口をひらかない。 (しずかに)法のためである。 どんな困難があろうと 恐れてはならない ……お前たちが行かないなら、私がいくことにしよう。」 鑑真の思いがけない言葉に、弟子たちは驚きのため おそれたように、顔をあげ、 やげて、うたれたように、首を垂れる。 単語入場券 見回す 見付かる 劇映画 女優’ 筋 ところどころ(所々) 上映 ヒロイン 演じる 役 魅力的 賞 男優 父親 いかにも ストーリー 天平 甍 シナリオ ナレーション 唐 高僧 留学僧 一行 揚州 雲岡 普照 上がる 外国人 群れ 道抗 立ち止まる 指す 大明寺 鑑真 居間 渾天儀 博学 うかがう(窺う) 香炉 緩やか 漂う 経典 ひもとく 僧 栄叡 同じく 奈良 興福寺 大安寺 玄朗 修業 弟子 推薦 控える 長老 座 ほの暗い 重苦しい 沈黙 支配 祥彦 辿り着く 徳清 緊張 口をつぐむ 語りかける お前 求法 燃える 玄奘三蔵 めざす(目差す) 長安 旅立つ 仏典 授戒師 応える 戒律 法 左右 かえりみる(顧みる) 息を飲む そそぐ 口を開く 恐れる 思いがけない 垂れる