第十七課 マスコミ 新聞や雑誌、ラジオ、テレビでの情報活動を マス?コミュニケーション(略してマスコミ)と言います 日本におけるマスコミは非常に発達しています 新聞には四つの主な全国紙、 多くの地方紙、専門紙があります。 近年の調査では、日本の日刊新聞の発行部数は 人口一〇〇〇人あたり五八〇部ぐらいで これは世界で第一位です。 テレビの普及率は人口一〇〇〇人あたり二七〇台ぐらいで、 たいていの家庭に一台はあります 「オリンピックをカラーで見よう。」とか、 「月での散歩をカラーで見よう。」という広告で電機メーカーはカラーテレビをたくさん売りました。 その結果、今では、カラーテレビもかなり普及しています マスコミ、とくにテレビは子どもに大きな影響を与えています。 子どもたちは夜おそくまでテレビの前を離れないので、 親は困っています。 こんな子どもを「テレビっ子」と言います あそこに止まっている電車に乗りますか。 いいえ、あれは京都へ行く電車です。 わたしたちが乗る電車はもうすぐ来るでしょう。 ところで、近ごろ駅にはきれいなポスターがたくさんはってありますね あれには「Discover Japan(ディスカバージャパン)」と書いてありますよ。 このごろ英語を使った広告が多いですね。 まちがった英語の使い方もよく見かけます。 あまりたくさん英語が使ってある広告も困りますね この間、「クールあタッチでハードなアクションをダイレクトにサービスする 『ナポレオン?ソロ』」という映画の宣伝がありました。 一度聞いただけでどういう意味かわかりますか ううん……。英語だけでなく フランス語や中国語などを使った広告も多いですね。 そうですね。 必要以上に外国語を使うことはよくないですね。 近ごろわたしの子どもがテレビコマーシャルで言ったことばをよく使うので困っています 「がんばらなくちゃ」ということばがよく流行していますね。 薬のテレビコマーシャルでしょう。 薬をのんでまでがんばる必要があるかどうか疑問ですね。 おしつけがましい広告や日本語を混乱させる宣伝はほんとうに困りますね。 応用文 人間愛の金メダル 一九六四年、第十八回オリンピック東京大会が開かれた時のことです 十月十四日、ヨットレース、相撲湾で行われました。 スウェーデンチームのほこる 「ハヤマ号」には、キエル兄弟が乗っていました。 兄さんのラース選手は、 店を経営する三十才のベテラン選手。 弟のスリダ選手は、二十五才の大学生。 午前十一時、いよいよスタートです。 二十一隻のヨットは、あれる波に向かって走りだしました 先頭グループに少しおくれたものの、 スウェーデンチームのハヤマ号は、 あれる海のほうが得意でもあるかのように、 びくともしません。 目の前に、同じコースのオーストラリア艇「ダイアグロ号」がいます ダイアグロ号には、 ウィンター選手とダウ選手が乗っていました。 ヨットのかたむくのを防ぐために、 支えづなにつかまえい、体を外に乗り出していたウィンター選手は、 スウェーデン艇がせまって来るのを見て、はっとしました。 乗り出した体を、あお向けにして 帆の向きを変えようとしたとたんに 「あっ。」支えづなが切れました。 ウィンター選手は、あっという間にほうり出されて 波間に消えてしまいました ダウ選手は、マストにへばり付きながら、 夢中でウィンター選手のすがたをさがしました。 もうレースどことではありません。 早く助け上げないと、ウィンター選手の命があぶないのです ダイアブロ号は、あらしの中で 急旋回をしました。 けれども、風速十三メートルの風にあおられて そのまま横たおしになりました。 「しまった。これじゃ助けにも行けない。」 たおれたヨットにつかまったまま ダウ選手の顔は、真っ青になりました。 スウェーデン艇ハヤマ号は、たちまち追いついて、 そのそばを通りぬけました。 「スリグ、たいへんだ。 オーストラリアの選手が海に落ちたぞ。」 ハヤマ号の上で、とっさにさけんだのはラース選手でした。 レースに勝つためには このまま走りぬけるほかありません。 しかも、ハヤマ号の調子は、いつも以上にすばらしいのです。 事故を助けるのは、おれたちの役目じゃない。 このまま、いっきに走りぬけよう。 いや待て。 危険にさらされている人の命を見過ごしていいものだとうか。 ラース選手とスリグ選手の頭の中には、 一瞬の間に、二つの考えがゆきかいました。 二人は、顔を見合わせました。 「兄さん、レースよりも人の命だ。」 「うん。」 目と目が、ちらっと、うなずき合いました。 ハヤマ号は、レースを中断しました。 風をたくみに利用して向きを変えると、 百メートルもバックして、 オーストラリアチームのウィンター選手をさがしました。 「あ、あそこだ。」ウィンター選手が、 波間にもまれています。 「がんばれ、今すぐ、助けるぞ。」 近づいたハヤマ号から、 ウィンター選手に向かって、 さっとロープが投げられました。 ウィンター選手を無事に救助の船に送り届けたハヤマ号は ふたたびコースにもどりました。 ハヤマ号はついにゴールに入りました。 順位第十二位。 ゴールインしても、何事もなかったような顔のラース選手とスリグ選手のそばに、 間もなく、ほかの国々の選手たちが、 集まって来ました。 新聞記者たちも、かけよって来ました。 「よくやってくれた。」 「君たちは、ヨットマンのほこりだよ。」 「きみたちこそ、人間愛の金メダル。 スポーツマンの精神の花だよ。」 人々は、そう言って、心からキエル兄弟をほめたたえたのでした。 単語マスコミ 全国 地方紙 専門紙 日刊 あたり オリンピック メーカー 離れる ポスター ディスカバージャパン 見かける クール タッチ ハード アクション ダイレクト ナポレオン?ソロ 押し付けがましい 混乱 金メダル ヨットレース 相模湾 誇る ハヤマ号 キエル ラース ベテラン 選手 スリグ スタート 隻 ヨット 波 先頭 グループ びくとも コース 艇 ダイアブロ号 ウィンター ダウ 傾く 支えづな 乗り出す 迫る(逼る) はっと 仰向け 帆 あっという間に 抛り出す 波間 消える マスト へばりつく 命 急旋回 風速 あおる(煽る) よこたおし しまった 真っ青 たちまち(忽ち)通り抜ける とっさに(咄嗟に) 勝つ 走りぬける おれたち(俺たち) 役目 さらす(晒す) 見過ごす 一瞬 行き交う 見合わせる ちらっと 中断 巧み バック 揉む さっと ロープ 無事 救助 送り届ける 再び ついに(終に) 駆け寄る ヨットマン 誇り 褒め称える