前文 李さんは日本の友人に誘われて、歌舞伎と相撲を見ました。 歌舞伎は江戸時代から始まったもので、今でも日本の代表的な伝統芸能の一つになっています。 人気のある出し物の時に、劇場のよい席はいつでも売り切れてしまうそうです。 伝統文化としての歌舞伎は決まりがたいへん多く、一般の日本人にとっても、わかりにくいそうです。 そして、役者には役者の家の男の子しかなれませんから、伝統的演劇として守ることはやさしいことではありません。 相撲は日本の国技で、一年に六場所行われます。 相撲は人気のある日本の国技だけに、よい席はすぐ売り切れてしまうそうです。 相撲の勝負は行司によって判定されます。 成績がよければ地位が上がり、負ければ逆に下がり、きびしい勝負の世界と言われています。 会話 (歌舞伎劇場で) 小林:李さんは今まで歌舞伎を見たことがありますか。 李:いいえ、まだ見たことがありません。今日が初めてです。 小林:そうですか。 李:日本の伝統文化はいろいろありますが、その中で、歌舞伎は今でも代表的なものの一つでしょう。 小林:ええ。人気のある出し物の時によい席はいつでも売り切れてしまいます。 李:切符は高いですか。 小林:ええ、高いのは一万円以上もするんです。 李:ところで、歌舞伎はいつごろから始まったんですか。 小林:江戸時代からです。 李:前に歌舞伎についての本をちょっと読んでみたんですが、役者は男の人だけだそうですね。 小林:ええ、そうです。歌舞伎が始まったころは女の役者もいたんですが、今は男の人だけになりました。 李:男の人なら、だれでも役者になれるんですか。 小林:いいえ、役者の家の子供しかなれません。 李:じゃ、男の子がいなかったらどうするんですか。 小林:養子をもらうという方法もあります。日本の伝統文化を守るのも容易なことじゃありません。 李:ほんとうにむずかしいですね。 小林:今日はおすしをもってきたんですが、いかがでしょうか。 李:今ごはんを食べたところです。後でいただきます。 ところで、観客はお弁当を食べながら、芝居の始まるのを待っていたりして、とても楽しそうな雰囲気ですね。 小林:そうですね。中にはイヤホンを耳に当てている人もいるでしょう。 あれは歌舞伎の解説を聞きながら芝居を見るもので、日本語のものと英語のものがあります。 李:歌舞伎は日本人にとってもわかりにくいですか。 小林:ええ。歌舞伎には決まりがたいへん多くて、解説がなければ分からないことも多いのです。 あっ、幕が開きました。舞台の左側を見てください。 あそこは下座といって、歌舞伎の伴奏音楽を演奏するところです。 舞台の上では、役者たちによって芝居が進行していきますが…。 李:役者が見えませんね。 小林:役者は花道から出てくるんです。 花道が観客席の中に設けられ、役者の出入りが間近に見られるように工夫されています。 李:切符を買う時は花道に近い席を選ぶとよいですね。 小林:ええ、そうです。 李:舞台の場面の変化が速いですね。 小林:ええ、歌舞伎の舞台は回り舞台といって、次の場面に素早く移り変われるようになっています。 ほかに顔の隈取りやかつらなども歌舞伎の特色です。 李:それは中国の京劇とよく似ていますね。 (国技館で) 李:わあ、すごい人ですね。 藤川:ええ、毎日満員ですよ。 李:藤川さん、相撲は好きですか。 藤川:ええ、大好きです。相撲のテレビ放送は毎晩欠かさず見ていますよ。 昨日は大関と横綱との対戦でしたが、あれはすごかった。思わず手に汗を握りました。 李:藤川さんはときどき、相撲を見にいらっしゃいますか。 藤川:ええ、好きですから暇があったら見物にきます。 李:相撲はいつもこの国技館で見られるんですか。 藤川:いいえ、一月から十一月にかけて、六場所あって、シーズンごとに興行の場所が変わるんですよ。 李:そうですか。ここはほんとにいい席ですね。 日本に来て、相撲が見られるなんて思ってもみませんでしたよ。 こういう席のきっぷはふつうじゃ、なかなか手に入らないでしょう。 藤川:そうですね。人気のある日本の国技だけに、よい席はすぐ売り切れてしまいますよ。 李:そうですか。これほど土俵に近いと、力士の顔もよく見えていいですね。競技はもう始まっていますか。 藤川:いいえ、取り組みは今から始まるところです。 李:派手な着物を着て土俵の上で動き回っているのはどういう人ですか。 藤川:あれは行司です。 李:「行司」とは何ですか。 藤川:「行司」というのは力士の取り組みを見て勝負を判定する人です。 李:どのように判定するんですか。 藤川:力士は立ち上がった以上は、足の裏以外の体のどの部分でも土に触れれば負けです。それから、土俵から出たら負けです。 李:お相撲さんの地位はどう決めるんですか。 藤川:成績がよければ地位が上がります。もちろん、負ければ逆に下がります。 李:きびしい勝負の世界ですね。ところで、お相撲さんは相撲の前にどうして塩をまくんですか。 藤川:あれは昔から伝えられた習慣で、いわゆる「清め」のためです。 李:力士は普通の日本人よりずっと体が大きいですね。 藤川:ええ、力士は身長一七三センチ、体重七十五キロ以上なければいけないそうです。 李:対戦のとき、体重の制限がありますか。 藤川:いいえ、相撲はレスリングやボクシングと違って体重制限というものがないから、やせた力士と山のように大きな力士が対戦することもあります。 李:そうですか。「百聞は一見に如かず」のことばどおり、今日はいい勉強になりました。どうもありがとうございました。 単語 歌舞伎 かぶき 相撲 すもう 芸能 げいのう 決まり きまり 役者 やくしゃ 演劇 えんげき 国技 こくぎ 勝負 しょうぶ 行事 ぎょうじ 判定 はんてい 地位 ちい 負ける まける 小林 こばやし 養子 ようし 観客 かんきゃく イヤホン 解説 かいせつ 幕 まく 舞台 ぶたい 下座 げざ 伴奏 ばんそう 演奏 えんそう 進行 しんこう 花道 はなみち 観客席 かんきゃくせき 設ける もうける 出入り でいり 間近 まぢか 場面 ばめん 回り舞台 まわりぶたい 素早い すばやい 移り変わる うつりかわる 隈取り くまどり かつら 藤川 ふじかわ 欠かす かかす 大関 おおぜき 横綱 よこづな 対戦 たいせん 思わず おもわず 手に汗を握る てにあせをにぎる 握る にぎる …毎に ごとに 興行 こうぎょう 手に入る てにはいる 土俵 どひょう 力士 りきし 競技 きょうぎ 取り組み とりくみ 派手 はで 動き回る うごきまわる 立ち上げる たちあげる 足の裏 あしのうら 以外 いがい 土 つち 触れる ふれる 負け まけ 撒く まく 所謂 いわゆる 清め きよめ 身長 しんちょう 体重 たいじゅう 制限 せいげん レスリング ボクシング 痩せる やせる 百聞は一見に如かず ひゃくぶんはいけんにしかず 読解文 日本人がこよなく愛するスーボツは野球である。 八月に海外に出た人は日本の衛星テレビ放送をとても見たがる。 それは甲子園球場で行われている高校野球の結果が気になるからだ。 家庭では昼間からテレビの前に釘づけになり、地元の高校を応援する。 日本のプロ野球は十二球団で、セントラルリーグとパシフィックリーグに分かれる。 それぞれがベナントを競って百三十試合を戦う。そして両リーグの優勝チーム同士が日本シーズンで戦う。 この時は日本中がまるで野球狂になったようで、優勝したチームのオーナーがデパートの場合は大バーゲンセールが展開される。 この人気の秘密は一体何だろうか。野球はビジネスであり、競技であり、見せるスーボツである。 そこには集団の中での協力、勤勉、年功序列、メンツなどを重視する日本人社会の特徴がすべて入っているからであろう。 単語 よこなく 愛 あい 海外 かいがい 衛星 えいせい 甲子園 こうしえん 球場 きゅうじょう 気になる きになる 釘付け くぎづけ 地元 じもと 応援 おうえん プロ 球団 きゅうだん セントラルリーグ パシフィックリーグ 分かれる わかれる ペナント 競う きそう 戦う たたかう 両 りょう リーグ 優勝 ゆうしょう チーム シリーズ 狂 きょう オーナー 展開 てんかい 秘密 ひみつ ビジネス 集団 しゅうだん 勤勉 きんべん 年功序列 ねんこうじょれつ 面子 メンツ 重視 じゅうし