前文 研修生が訪問研修の一環として日本の自動車工場を見学しました。 まず、工場の作業内容の説明を聞き、それから、現場を見学しました。 この工場は一九七〇年に建てられたもので、今、車のボディーを作り、関連工場から集められた部品を組み立てる作業をしています。 工場では、能率的に仕事をするため、コンピューターやロボットが使われ、生産ラインのコントロールはみんな自動化されています。 危険な仕事はほとんどロボットがやってくれるので、ずいぶん働きやすくなりました。 日本の自動車製造技術が進むにつれて、自動車の生産量がますます増えてきて、アメリカをはじめ、多くの国へ輸出されています。 会話 案内係:ようこそ、いらっしゃいました。 研修生:はじめまして、どうぞよろしくお願いします。 案内係:こちらこそ、どうぞ、よろしくお願いします。私は案内係の杉村と申します。 今日のスケジュールについてですが、まずここで工場の作業内容について説明します。 それから、現場へ行って、見学していただきますが、いかがでしょうか。 研修生:はい、お願いします。 案内係:では、見学の前に、この工場の作業内容を簡単に説明します。 車には、いす、タイヤ、エンジンなど、いろいろな部品がありますが、それらはほかの関連工場で作られ、ここに集められます。 ここでは、車のボディーを作り、集められた部品を組み立てる作業をします。 では、ボディー作りからご案内しましょう。 研修生:この工場はいつ建てられたのですか。 案内係:一九七〇年に建てられた工場で、先進的な設備と技術をとりいれています。 研修生:工場の敷地面積はどのぐらいでしょうか。 案内係:敷地面積は五万平方メートルあります。 研修生:工場はどのような仕組になっているのですか。 案内係:四つの職場と一つの事務所、それから一つのコンピュータールームからなっています。 研修生:そうですか。働いている人が少ないようですね。 案内係:ええ、能率的に仕事をするために、コンピューターやロボットを使っています。 研修生:工場の生産ラインのコントロールはみんな自動化されているんですね。 案内係:そうです。みなコンピューターでオートコントロールしています。 ほら、ごらんください。ロボットが溶接しているところです。 研修生:ロボットが行ったり来たりして、まるで生き物のように動いていますね。 案内係:ええ、私たちもロボットに名前をつけて、子供のように大切にしているんです。このロボットは「桃太郎」というんです。 研修生:そうですか。かわいい名前ですね。あそこに時計のようなものがありますね。あれは何ですか。 案内係:あれはブレーキの性能を調べる機械です。 研修生:そこにトンネルのようなものがありますが、あれは何ですか。 案内係:ああ、あれは、雨が降った時、車の中に水が入らないかどうかを調べる機械です。 トンネルの中にシャワーがたくさんついているんです。今ちょうどシャワーテストをしているところです。 研修生:この工場では、何台ぐらいのロボットが使われているんですか。 案内係:全部で一〇〇台ぐらいです。今、危険な仕事はほとんどロボットがやってくれるので、ずいぶん働きやすくなりました。 研修生:この工場では、一日に何台ぐらいの自動車が生産されているんですか。 案内係:約二〇〇台です。 研修生:日本では、一年に何台ぐらいの車が生産されていますか。 案内係:輸出を含めて約一二〇〇万台でしょう。 研修生:どんな国へ輸出されていますか。 案内係:アメリカをはじめ、ヨーロッパ、アジアの国々へ輸出されています。 車の輸出は日本の輸出総額の二〇パーセントを占めているんです。 研修生:日本はいつごろから自動車を作り始めたのですか。 案内係:日本の自動車は一九一〇年ごろ町の中を走るようになりました。 当時は外国から部品を輸入して組み立てるよりしかたがありませんでした。 研修生:国産の自動車はいつごろから増えましたか。 案内係:日本の自動車製造技術が進むにつれて、一九三五年ごろから国産車が増えてきました。 とくに、一九六〇年代から始まる高度経済成長期には、自動車が急速に増え、日本は車社会の時代に入りました。 研修生:あっ、だんだん自動車の形になりますね。 案内係:ええ、ベルトコンベヤーで運ばれる間に少しずつ組み立てられるんです。 研修生:一台の自動車を組み立てるにはどれぐらいの時間がかかりますか。 案内係:二十分ぐらいです。 研修生:速いですね。ロボットの仕事は正確ですか。 案内係:ええ、ほとんどミスはありません。コンピューターがロボットに作業の手順を教えておきます。 すると、ロボットは記憶したとおりにやってくれるのです。 研修生:機械はいつもインプットしたとおりの作業をしますから、人間より間違いが少ないでしょうね。 案内係:ええ、そのとおりです。また、人間と違って、ロボットは疲れたり、気が散ったりしませんから…。 研修生:それに何時間も働き続けることができますね。 案内係:そうです。 研修生:でも、ロボットを生産ラインに使うことで、全ラインのスピードが速くなるし、人間のかわりにロボットが作業をするから、おそらくだいぶ人減らししたでしょう。 案内係:それはそうですけど、しかし、それは悪いことばかりとはかぎりません。一部の人は新しい技術の開発にとりくんでいます。 研修生:今日は工場を見学させていただいただけでなく、詳しい説明までしていただき、とてもいい勉強になりました。 ご親切なご案内どうもありがとうございました。 案内係:いいえ、どういたしまして。機会がありましたら、またいらっしゃってください。 単語 研究生 けんきゅうせい 一環 いっかん 作業 さぎょう 現場 げんば 建てる たてる ボディー 関連 かんれん 能率的 のうりつてき ロボット 生産 せいさん ライン コントロール 自動化 じどうか 危険 きけん 生産量 せいさんりょう 輸出 ゆしゅつ 杉村 すぎむら スケジュール タイヤ エンジン ら 先進的 せんしんてき 設備 せつび 取り入れる とりいれる 敷地 しきち 仕組み しくみ 職場 しょくば 事務所 じむしょ コンピューター•ルーム オートコントロール 御覧 ごらん 溶接 ようせつ 生き物 いきもの 名前(なまえ)をつける 桃太郎 ももたろう ブレーキ 性能 せいのう シャワー テスト ヨーロッパ 国々 くにぐに 総額 そうがく パーセント 占める しめる 国産 こくさん ベルトコンベアー 運ぶ はこぶ 正確 せいかく ミス 手順 てじゅん すると 記憶 きおく インプット 気が散る きがちる 全 ぜん おそらく おそらく 人減らし ひとへらし 取り組む とりくむ 読解文 人間にとって、つらい仕事をロボットがしてくれる――これはまったくすばらしいことだ。 それに経営者にとっても、ロボットを使うことでコストが下がり、生産量が増えるのだから、これからもどんどんロボットを使うことだろう。 しかし、ロボット導入がいいことばかりとは限らない。 ロボットは機械だから、言いつけられた仕事をいかに忠実に、効果的に行なっても手加減することを知らない。 ロボットの腕にはさまれて死んだ作業員もいるし、電磁波によって暴走したロボットが死亡事故を起こしたこともある。 ロボット導入の一番深刻な問題は企業内の配置転換などで、余剰人員が生じて、失業問題にまで発展していくことだろう。 単語 導入 どうにゅう 経営者 けいえいしゃ コスト 下がる さがる 言い付ける いいつける 如何にも いかに 忠実 ちゅうじつ 効果的 こうかてき 手加減 てかげん 腕 うで 挟む はさむ 作業員 さぎょういん 電磁波 でんじは 暴走 ぼうそう 死亡 しぼう 起こす おこす 企業 きぎょう 内 ない 配置転換 はいちてんかん 余剰 よじょう 人員 じんいん 生じる しょうじる 失業 しつぎょう