前文 万さんは経済学科の学生ですが、実習のために、ある日本の貿易会社で面接を受けました。 面接はそれほど難しくなかったのですが、実習はちょっと大変でした。 お客様は会社にとって大切なので、丁寧に応対しなくてはいけません。 また、言葉づかいにも十分注意しなければならないのです。 たとえば、社外の人に社内の人のことを言うとき、敬称を使う必要はありません。 電話応対もかなり難しいようです。 電話応対の基本的なポイントは相手の名前や会社名を復唱確認して間違いのないように用件を聞き取り、 名指しされた人に伝えることですが、まず、挨拶の言葉を忘れてはいけません。 電話は相手の顔が見えないので、特に丁寧に、親切に応対するように心がける必要があります。 会話 (面接) 万:失礼します。 係:どうぞ、座ってください。お茶でも入れましょうか。 万:どうぞ、おかまいなく。 係:お名前は。 万:万建と申します。 係:大学で何を勉強していますか。 万:経済を勉強しています。 係:実習の内容について知っていますか。 万:いいえ。詳しく教えてほしいんですが。 係:こちらは日本語を使う仕事ばかりですが、日本語はどのくらいできますか。 万:今習っているところですから、あまり上手じゃありません。仕事はどんなものがありますか。 係:翻訳もあれば、通訳の仕事もあります。 万:翻訳と通訳ってどんな仕事ですか。 係:翻訳は、いろいろな資料を中国語か日本語に翻訳したりする仕事で、通訳はお客さんを接待したり、事務の手伝いをしたりする仕事です。 万:通訳としてどういう点に注意すべきですか。 係:やはり、マナーと言葉づかいですね。 万:わたしみたいに日本語があまり上手じゃない者でも通訳になれますか。 係:努力すればできるでしょう。 万:すぐれた通訳になるには、どのくらいかかりますか。 係:人によってちがいますが、たいてい三年はかかります。ところで、大学は遠いですか。 万:ええ、ちょっと遠いですが、遅刻しないようにがんばります。 係:仕事は大事ですから、ことわらずに会社を休んではいけませんよ。 万:はい、わかりました。 係:万さんはどうしてここへ来て実習したいんですか。 万:大学にいるうちに、ぜひ一度実習をして、日本語らしい日本語を勉強したいと思ったのです。 係:実習したあと、どうするつもりですか。 万:大学にもどって、将来、すぐれた通訳になれるように、ひきつづき勉強したいと思います。 係:そうですか、わかりました。来週金曜日までに万さんの仕事を検討しておきますから、土曜日にもう一度こちらへ来てください。 万:はい。どうもありがとうございました。失礼します。 (実習一)来客への応対 客:失礼いたします。 万:(すぐ立って)いらっしゃいませ。 客:(名刺を出し)私、三井物産の野村と申します。いつもお世話になっております。 万:三井物産の野村様でいらっしゃいますね。こちらこそ、いつもお世話になっております。 私は営業部の実習生で万と申します。 客:営業部の鈴木課長はいらっしゃいますか。 万:課長の鈴木でございますか。申し訳ございませんが、鈴木はただいま、会議中でございますが。 万:(会議室に入る)失礼いたします。鈴木課長、三井物産の野村様がいらっしゃいましたが…。 鈴木:あっ、そう。じゃ、悪いが、応接室で十分ほど待ってくださるよう伝えてくれ。 万:お待たせいたしました。応接室へご案内いたします。どうぞこちらへお越しください。 (応接室前で)こちらでございます。(入って上座を示し)どうぞこちらへおかけください。鈴木は十分ほどで参りますので、しばらくお待ちください。 客:はい、どうも、ありがとうございます。 (実習二)電話をかける 交換:はい、お待たせいたしました。三菱商事でございます。 万:私、住友貿易の万と申しますが、営業部の中村課長をお願いいたします。 交換:はい、おつなぎいたしますので、少々お待ちください。 社員:はい、三菱商事営業部でございます。 万:私、住友貿易の万と申します。いつもお世話になっております。中村課長はいらっしゃいますか。 社員:住友貿易の万様でございますね。こちらこそ、いつもお世話になっております。 申し訳ございませんが、中村はただいま席をはずしております。 五時に戻る予定でございます。おさしつかえがなければ、代わりにご用件を承りましょうか。 万:そうですか。では、伝言をお願いできますか。中村課長がお戻りになりましたら、住友貿易の万までお電話をいただきたいんですが。 電話番号は六五三九〇七六八、内線二四一五です。よろしくお願いいたします。 社員:六五三九〇七六八ですね。はい、かしこまりました。中村が戻りましたら、万様へお電話するよう伝えます。 万:恐れ入りますが、お名前をお願いいたします。 社員:失礼いたしました。私、同じ課の佐藤と申します。 万:ではお願いたします。 社員:課長、先ほど万様からお電話がありました。課長が戻られましたらお電話をいただきたいと言っていました。 中村:うん、ありがとう。 (実習三)電話を受ける 万:はい、住友貿易営業部でございます。 西村:私、三洋電機の西村と申します。いつもお世話になっております。鈴木課長はいらっしゃいますか。 万:三洋電機の西村様でいらっしゃいますね。こちらこそ、いつもお世話になっております。 営業課長の鈴木でございますね。ただいま、代わりますので、少々お待ちください。 (鈴木に向かって)課長、お電話です。 鈴木:はい、お電話代わりました。 西村:私、三洋電機の西村と申します。いつもお世話になっております。鈴木課長でいらっしゃいますね。 鈴木:ええ、私です。で、今日は? 西村:実はこのたび、私どもで新製品を開発いたしました。 それで一度お伺いしてご紹介したいと思いまして、お電話を差し上げました。 できれば今週中にお伺いしたいと思いますが、ご都合はいかがでございましょうか。 鈴木:そうですね。結構ですよ。では金曜日の午後二時に来ていただけませんか。 西村:はい、かしこまりました。あのう、その時、よろしければ一時間ほどお時間をいただきたいのですが。 鈴木:はい、わかりました。では、お待ちしております。 単語 実習 じっしゅう 学科 がっか 面接 めんせつ 応対 おうたい 社外 しゃがい 社内 しゃない 敬称 けいしょう 基本的 きほんてき 復唱 ふくしょう 確認 かくにん 用件 ようけん 名指し なざし 座る すわる 万建 まんけん 接待 せったい 事務 じむ 優れる すぐれる 引き続き ひきつづき 検討 けんとう 来客 らいきゃく 三井 みつい 物産 ぶっさん 野村 のむら 営業部 えいぎょうぶ 実習生 じっしゅうせい 応接室 おうせつしつ 越す こす 上座 かみざ 示す しめす 三菱 みつびし 商事 しょうじ 住友 すみとも 中村 なかむら 繋ぐ つなぐ 席(せき)をはずす 予定 よてい 差し支え さしつかえ 代わり かわり 承る うけたまわる 伝言 でんごん 内線 ないせん 三洋電機 さんようでんき 西村 にしむら ども 新製品 しんせいひん 開発 かいはつ 先ほど さきほど 読解文 「つきあい」は仕事の重要な部分です。日本の会社は共同体で、そこに勤める社員は協力し合って仕事をしなければなりません。 上司、同僚とは、仕事はもちろん、飲むときも遊ぶときも一緒というのが日本の会社です。 日本人はよく会社の人と酒を飲みます。 酒を飲んだり、カラオケで歌ったりすることによって仕事のストレスを解消したり、互いのコミュニケーションを深めたりするのです。 それによって人間関係がスムーズになれば、結果的には会社によい影響をもたらすというのが、日本的な考え方です。 つきあいを断る場合も「ありがとうございます。 残念ですが、今日は都合が悪いので、いずれ、また、そのうちに…」と遠まわしに断るほうがいいです。 でも、断ってばかりいないで、たまには、つきあったり、本音で語り合う(語り合ったりする)ことも必要でしょう。 単語 部分 ぶぶん 共同体 きょうどうたい 上司 じょうし 同僚 どうりょう ストレス 解消 かいしょう スムーズ 結果的 けっかてき 日本的 にほんてき 何れ いずれ 遠回し とおまわし 付き合う つきあう 本音 ほんね 語り合う かたりあう