前文 李さんは読書のレポートを書くために、今適当な本をさがしているところです。 授業に出ながら、レポートを書くのはちょっと大変ですが、李さんにとっては、返ってそのほうが刺激になっていいみたいです。 彼は図書館へ本を返しに行く山本さんに会いました。 山本さんの借りた本は「言葉と文化」という本で、日本人らしい発想という視点から日本語と日本文化とのかかわりを書いたものです。 李さんはいい本だと考え、翌日、図書館へ行ってその本を借りました。 ところが、数日後、李さんは、日本人らしい発想は分かりにくいと思ってその本を図書館に返しました。 そして、山本さんの愛読書「わが輩は猫である」というおもしろい本を借りて読むことにしました。 会話 李 : 山本さん、どちらへ行きますか。 山本:あ、図書館です。本を返しに行きます。 李 :どんな本ですか。 山本:「言葉と文化」という本です。 李 :どんなことが書かれていますか。ぜひ教えてほしいんですが。 山本: 日本人らしい発想という視点から日本語と日本文化とのかかわりが書かれています。 李 : おもしろいですか。 山本: ええ。李さんも読んでみたらどうですか。とてもいい本だといわれていますよ。 李 :そうですか。じゃ、私も明日、図書館へ行って借りて読みましょう。 山本: よかったら貸してあげますけど。 李 : あ、どうもありがとうございます。でも、やっぱり自分で借ります。ゆっくり読みたいですから。 山本:また、読書のレポートかなんかですか。 李 :ええ、今、適当な本をさがしているところです。 山本: そうですか。授業に出ながら、レポートを書くのは大変でしょう。 李 :ええ。でも、返って、そのほうが刺激になっていいみたいですね。 山本: そうですか。じゃ、がんばってください。 李 : はい、がんばります。 (翌日、図書館で) 李 :すみません、ちょっとお願いします。 係 :はい、何ですか。 李 :日本語の本を借りたいんですが。 係 : どんな本ですか。 李 :「言葉と文化という」本ですが。 係 :3番の棚を見てください。 李 : はい、ありがとうございます。3番の棚には、どんな本がありますか。 係 : 語学の本もあれば、文化や文学の本もあります。 李 : そうですか。さがしてみます。あ、ありました。お願いします。この本を貸してください。 係 :はい、図書館の利用カードは持っていますか。 李 : はい、持っています。 係 :ちょっと見せてください。はい、これでけっこうです。 李 : 何冊まで借りられますか。 係 :1人5冊です。 李 :じゃ、あと4冊借りられますね。何日まで借りられるんですか。 係 :貸出期間は2週間です。再来週の金曜日までに返してください。 李 : はい、分かりました。金曜日までに返します。 係 :きたなくしないように気をつけてください。 李 : はい、分かりました。ほかにどんなものが借りられますか。 係 : CDは5枚まで借りることができます。DVDなら3枚まで借りられます。 李 :どうもありがとうございました。では、失礼します。 (数日後) 山本: 李さん、「言葉と文化」という本を、もう読んでしまいましたか。 李 : いいえ、まだ読み終わっていないんですけど、内容があまりに難しいので図書館に返しました。 山本: ああ、そうですか。どこが難しいんですか。 李 :日本人らしい発想って、私たちには理解しにくいみたいですね。 山本: ああ、そうかもしれませんね。 李 : ところで、山本さんは語学よりも文学のほうが好きだと聞いていますが。 山本:ええ。 李 :愛読書は何ですか。 山本:好きな小説はいっぱいあって、どれって言えないんですけどね。そうですね。漱石の作品が好きですね。 李 :漱石って? 山本: 日本の明治時代の有名な作家、夏目漱石ですよ。 李 :そうですか。あのう、どんな作品が有名ですか。 山本: たとえばこの「わが輩は猫である」とか。 李 : おもしろい題名ですね。もう読み終わりましたか。 山本:いいえ、今読んでいるところです。 李 : 読み終わったらちょっと貸してくださいませんか。読書のレポートを書くつもりです。 山本: そうですか。じゃ、読み終わったら李さんに貸してあげます。 李 : どうもありがとうございます。 単語 読書 どくしょ 返す かえす 山本 やまもと …らしい 発想 はっそう 視点 してん かかわり 數日 すうじつ 愛読書 あいどくしょ わが輩(はい)は猫である やっぱり 語学 ごがく 文学 ぶんがく …冊 さつ 貸出 かしだし 期間 きかん 再来週 さらいしゅう 作品 さくひん 作家 さっか 夏目漱石 なつめそうせき 読解文 人はなぜ本を読むか かつて読書は、文化的な生活を求める唯一の方法だった。 本しかなかったから、教養も暇つぶしもみんな本でやっていた。 だから、よく本を読んだ。 でも、現在では、暇つぶしをしたいと思ったら、 本でなくても映画もあれば、マンガもある。 CDで音楽を楽しむということもできる。 確かに本は、その機能の多くを他のメディアに譲った。 それでも、なお本が強く持っている機能がある。 すなわち、考える力を広げたり、深めたりする作用が強い。 テレビ人間は、物知りだが、「どうして」「なぜ」という問いかけには弱い。 私たちは、これから長い人生を考える時に、読書を自分の人生にどう位置づけるかもよく考えてみよう。 単語 かつて 文化的 ぶんかてき 求める もとめる 唯一 ゆいいつ 教養 きょうよう 暇つぶし ひまつぶし 漫画 マンガ 機能 きのう メディア 譲る ゆずる なお 即ち すなわち 作用 さよう 物知り ものしり 問いかけ といかけ 弱い よわい 人生 じんせい 位置づける いちづける