白く烟った雨上がりの静けさ 古い映画の中 オリーブ色のトレンチコートとハイヒール ラストシーンの後ろ姿 青く染まった待ち合わせの夕刻 暗いガス燈の下 週末のオフィス街誰もいない 銀色の腕時計の針は チッチッチッ 今夜は秋の終わり 口唇から零れたサンセリフ書体の悲しげな言葉を残したまま 季節が巡る度に思い出すでしょう 12月の毛皮のコートのような雪の上をもう二人はきっと歩けない さよならは言わないわ 秋の終わりに 霧雨に包まれて消えてゆく君とビルヂングの隙間で夢を見ていた このままで幼気と恋は終わるのね 透明なエレベーター二人を降ろして次の朝を迎えれば 摩天楼に映る短いエンドロール 光るガラスの月も霞むA(アルファ)都市 赤い丸の内線 今夜の冷たい濃霧に滲んだ恋模様 ラストシーンを巻き戻した