春花に身をかがめて行った 時間達は虚ろに 俺の影に積み重ねられて行った 家出青年の背中は新しい腫れあがって行った 蒲団にもぐる時「このままでええや」思った 蒲団を蹴る時「このままじゃ駄目だ」思った 目をつむり乍ら走り去るあの煩わしさは すべて遠い春の日の少年の骨の中だ かかかかかかかか…… 雪道に自分の可笑しさを並べて行った 次々と苦渋が濡れたままの姿で いちころになった 家出青年の希望はドブ河を チャプチャプ海へ泳いで行った 蒲団にもぐる時「このままでええや」思った 蒲団を蹴る時「このままじゃ駄目だ」思った 楽しさにまぎれて散ってゆく 赤いうらめしの花 それでも手配された人達は 怒りの気球を打ち上げた かかかかかかかか…… にぎやかな 音ばやしの中にいた 地を這う孤絶の中にいた 家出青年のまぶたは 虚心にまみれて行った 蒲団にもぐる時「このままでええや」思った 蒲団を蹴る時「このままじゃ駄目だ」思った 目をつむり乍ら走り去るあの煩わしさは すべて遠い春の日の少年の骨の中だ かかかかかかかか…… 最なる時のさなかにあって 人どちは皆一樣  寒立馬である 寒げな淋しげな風である 「次世代のため」なぞと言うから  滑稽になっちまう 「負の遺産」なぞと括るから  たいがいになっちまう 原爆だろうと何だろうと イヤなモノはイヤだと声を成せばいい 色素のない奥ゆかしき美意識なぞ そんじょそこらの  ニワトリのフンですらない 君よ  君よもしや かつてこの国には  まっ青な翼の鳥がいた 貧困が暴力なら  無知も暴力である  悔しき暴力である 貧困が、貧困が暴力なら  無知も暴力である  悔しき暴力である