なすすべもなき 深い朝 庭一面の コスモスを見ていた 鬼の手にあやされてでもいるかのように それらはかすかにゆれて ほそい確かな声を私になげかけてくる 青い空とコスモスと鬼が 河辺という町のそれは赤い夢 来し方の無念の無数のトゲ 万感からだがはち切れそうになり 猿すべりの木の小枝にでもなったようだ いっそどうにか なるならなっちゃえ 青い空とコスモスと鬼が かの詩人はトリスを酌みながら 愛するものたちの事を語っているが 文学も愛も私にはその時どうでもよくて ただ己の肉切れに落ちていって 無性の気持ちのゆく果てを恐れていた 青い空とコスモスと鬼が