[01:13.04]桑名の夜は暗かつた [01:15.94]蛙がコロコロ鳴いていた [01:18.81]夜更の駅には駅長が [01:21.53]綺麗な砂利を敷き詰めた [01:24.13]プラットホームに只独り [01:26.75]ランプを持つて立つていた [01:46.64]桑名の夜は暗かつた [01:49.10]蛙がコロコロ泣いてゐた [01:51.61]焼蛤貝(やきはまぐり)の桑名とは [01:53.93]此処のことかと思つたから [01:56.69]駅長さんに訊ねたら [01:59.16]さうだと云つて笑つてた [02:35.00]桑名の夜は暗かつた [02:37.47]蛙がコロコロ鳴いてゐた [02:40.09]大雨の、霽(あが)つたばかりのその夜は [02:44.11]風もなければ暗かつた [02:50.30]「此の夜、上京の途なりしが、京都大阪間不通のため、臨時関西線を運転す」