夏草の揺れる窓辺に 横たわる青い果実は 服の乱れ直せぬままに 強い不安と戦いていた 海鳴りの遠い音 顔を撃つ真昼の陽射し やっとうす目を開けて そばの彼に気付く 君はもう 自分じゃないような気がしていた くっきりと刻みこまれた 陶酔の時間があった もう一人の激しい自分を 見せつけられて動けずにいた 首筋にへばりつく髪 脇の下 生ぬるい汗 やっとかすれた声で 彼の名前を呼ぶ 君は今 寒くもないのにふるえている 悲しいという訳じゃない 空っぽの涙が溢れ 今すぐにもナイフを握り 無性に髪を切りたくなった 目をおおう窓の夏草 耳をつくよしきりの声 やがて君は独りで 歩き出すのだろう 君はもう 女であることを逃れなれない 君はもう 女であることを逃れなれない