水の中で息が出来たらきっとこんな風でしょう 水之月 夕暮れ時はハッカ水の風の中 目を閉じて微笑む時それはいつも刹那 刹那の記憶は永久を紡ぐと人は歌う 深く腰掛けた椅子の上 通りを前に風の中 あの日あの日いつかのあの日 繋がっては消えてゆく 空は白く汗をかいて石鹸水のシャボン玉 潰れたサンダル引っかけて 何度も作り直したあの日 水屋に映る窓の外机の上の水模様 死んだふりして待っていた 時の足音聞いてたあの日 力強い腕の中で愛しきを握り締め 離れまいと抱き寄せる度 悲しみこぼれたあの日 水之月 時雨れる前の 蛍光る九日十日 あの日あの日いつかのあの日 繋がっては消えてゆく 深く腰掛けた椅子の上 通りを前に風の中 傷つかずに生きてゆくなど とてもつまらぬことだから 弱さは時に優しいけれど それもいつか錆びてゆく 水之月 時雨れだせば この身差し出し濡れましょう それまではここでこうして 刹那の風に吹かれましょう 水の中で息が出来たらきっとこんな風でしょう 水之月 夕暮れ時はハッカ水の風の中