落ちぶれて逃げてゆく貴族の平家を、追いかける坂東武者の直実、 とらえて討ちとろうと顔を見ると、我が子と同い年くらいの美しい若者。 一騎打ちの場面で、躊躇する直実、「私を討て!」という敦盛、 泣く泣く首を取るのですが、良く見ると腰には笛を携えていて、 こんな荒れくれた戦いの場にも芸術も忘れないという風雅な姿に心を打たれた直実は、 立派な手柄を立てたにもかかわらず、その後、法然に弟子入りし法名を法力房蓮生として出家します。 泣く泣く首を取ってその後出家してしまったことといい、 歌舞伎では君主に忠実な武将として描かれることといい、 直実の人間性が表れているように思います。