[00:00.00] 作曲 : 長津義司 [00:01.00] 作词 : 北村桃児 [00:19.45]槍は錆びても 此の名は錆びぬ [00:29.66]男玄蕃の 心意気 [00:40.77]赤穂浪士の かげとなり [00:46.66]尽す誠は 槍一筋に [00:56.62]香る誉れの 元禄桜 [01:13.88]姿そば屋に やつしてまでも [01:24.30]忍ぶ杉野よ せつなかろ [01:35.35]今宵名残に 見ておけよ [01:41.59]俵崩の 極意の一と手 [01:50.90]これが餞け 男の心 [02:09.47]涙をためて振り返る [02:19.18]そば屋の姿を呼びとめて [02:28.77]せめて名前を聞かせろよと [02:33.35]口まで出たがそうじゃない云わぬが花よ人生は [02:49.05]逢うて別れる運命とか [02:55.73]思い直して俵星 [03:02.27]独りしみじみ呑みながら [03:09.44]時を過ごした真夜中に [03:14.03]心隅田の川風を [03:16.47]流れてひびく勇ましさ [03:19.62]一打ち二打ち三流れ [03:22.30]あれは確かに確かにあれは [03:28.49]山鹿流儀の陣太鼓 [03:53.62]「時に元禄十五年十二月十四日、 [03:55.97]江戸の夜風をふるわせて、響くは山鹿流儀の陣太鼓、 [03:58.80]しかも一打ち二打ち三流れ、思わずハッと立ち上がり、 [04:02.05]耳を澄ませて太鼓を数え [04:04.40]「おう、正しく赤穂浪士の討ち入りじゃ」 [04:06.89]助太刀するは此の時ぞ、 [04:08.83]もしやその中にひるま別れたあのそば屋が [04:11.22]居りあわせぬか、名前はなんと今一度、 [04:19.70]逢うて別れが告げたいものと、けいこ襦袢に身を固めて、 [04:22.24]段小倉の袴、股立ち高く取り上げし、 [04:25.04]白綾たたんで後ろ鉢巻眼のつる如く、なげしにかかるは先祖伝来 [04:29.17]俵弾正鍛えたる九尺の手槍を右の手に、 [04:32.81]切戸を開けて一足表に出せば、 [04:36.55]天は幽暗地は凱々たる白雪を蹴立てて行手は松阪町…」 [04:56.34]「吉良の屋敷に来てみれば、今、討ち入りは真最中、 [05:11.01]総大将の内蔵之助。見つけて駆け寄る俵星が、 [05:21.37]天下無双のこの槍で、お助太刀をば致そうぞ、 [05:30.68]云われた時に大石は深き御恩はこの通り、厚く御礼を申します。 [05:41.39]されども此処は此のままに、 [05:44.97]槍を納めて御引上げ下さるならば有り難し、 [05:54.59]かかる折りも一人の浪士が雪をけたてて [06:05.11]サク、サク、サク、サク、サク、サクー、 [06:10.19]『先生』『おうッ、そば屋か』 [06:16.23]いや、いや、いや、いや、襟に書かれた名前こそ、 [06:21.92]まことは杉野の十兵次殿、わしが教えたあの極意、 [06:29.54]命惜しむな名おこそ惜しめ、立派な働き祈りますぞよ、 [06:36.92]さらばさらばと右左。赤穂浪士に邪魔する奴は何人たりとも [06:46.63]通さんぞ、橋のたもとで石突き突いて、槍の玄蕃は仁王立ち…」 [07:18.16]打てや響けや 山鹿の太鼓 [07:27.99]月も夜空に 冴え渡る [07:38.20]夢と聞きつつ 両国の [07:43.38]橋のたもとで 雪ふみしめた [07:52.97]槍に玄蕃の 涙が光る