…… 雨夜(あまよ)の月(つき)満(み)ちて ざわめく星(ほし)の声(こえ)が降(ふ)る 遠(とお)くに鈴色(すずいろ)の音(おと)を追(お)う 引(ひ)かれて入(い)るは 幻想(げんそう)の都(みやこ)へ誘(さそ)う路(みち)ならば さあ躊躇(ためら)うこともなく 夜(よる)の隙間(すきま)へ踏(ふ)み出(だ)す 導(みちび)くように聞(き)こえる歌(うた)は さらに深(ふか)く奥(おく)へ続(つづ)いて どこまでも落(お)ちてゆくように …… 夜露(よつゆ)が落(お)ちる時(とき) さざめく野(の)に吹(ふ)く風(かぜ)止(や)む 扉(とびら)を照(て)らし出(だ)す月明(つきあ)かり 開(ひら)かれたのは 現世(うつしよ)と鏡(かがみ)合(あ)わせの路(みち)ならば さあ躊躇(ためら)うこともなく 刻(とき)の間(はざま)へ踏(ふ)み出(だ)す ひらり漂(ただよ)う花(はな)の薄紅色(うすべにいろ)が 静(しず)かに燃(も)えている 奈落(ならく)へと落(お)ちてゆくように ……