たとえば ぼくが死んだら そっと忘れてほしい 淋しい時は ぼくの好きな 菜(な)の花畑(はなばたけ)で泣いてくれ たとえば 眠れぬ夜は 暗い海辺の窓から ぼくの名前を 風にのせて そっと呼んでくれ たとえば 雨にうたれて 杏子の花が散っている 故郷(こきょう)をすてた ぼくが上着(うわぎ)の 衿(えり)を立てて歩いている たとえば マッチをすっては 悲しみをもやす このぼくの涙もろい 想いは 何だろう たとえば ぼくが死んだら そっと忘れてほしい 淋しい時は ぼくの好きな 菜の花畑で泣いてくれ