さよならなんて 「月が見えない。あっ、今日は新月か。」 彼女と一緒に見た三日月はいつの間にかかけていってしまったらしい。月が見えない夜は、なんでこんなに暗いんだろう。 「本気の恋…か?」 自分がにっこりと笑えば、女の子たちはいくらでも近寄ってくる。それだけ自分には魅力があることも知っている。いままで「好き」と言われたことは数え切れないぐらいある。僕は、いつもその駆け引きを楽しんできた。 でも…彼女だけは違った。心の奥底が読めない。ほかの女の子たちなら喜ぶ言葉も…彼女だけには通用しない。だから…飾る必要も、駆け引きする必要もない。 「ねぇ、君…僕と一緒にいる時、どんな気持ちだった?いまはもう、君以外の女の子なんて目に入らないよ。こんな思いをするなら、好きだなんて、さよならなんて言わなければよかった。」 『なかなかに黙もあらましを何すとか相見そめけむ遂げざらまくに』 どうして二人は出会ってしまったのだろう。ずっと友達でいようと誓ったはずなのに… いまここに君がいたらいいのに…奥の隣に座って一緒に月を探そうよ。