お前、目が冴えちゃったの? そっか。それじゃ、しばらくは眠れそうにないね。 まあ、眠れないなら、起きてればいいよ。 僕は先に寝ちゃうかも知れないけど。 嘘だよ。もしかして本気にした? お前の反応を見るための冗談に決まってるでしょう。 ちゃんと起きてるよ。 お前が寝るまで、まあ、付き合ってあげる。 ん?本? おお、さっき僕が読んでた本が気になるの? あれは、仕事の資料として借りてる童話だよ。 そうだ、せっかくだから、お前にこの本の感想を聞いてみようかな。 実は、この童話のキャラクターグッズを作ることになって、そのプロモーションを任されたんだ。 ターゲットは若い女性だから、お前の意見は参考になると思うけど。どう? そう。それならよかった。 それじゃ僕が話してあげるから、お前は大人しく聞いててね。 猫と海の物語。 ある所に、平和で幸せな毎日を過していた猫がいた。 その猫は、いつものように、散歩に出たんだけど、何を思ったのか、普段と違う道を通ってみることにしたんだ。 すると、見たこともないくらい、大きな大きな水溜まりを発見した。 猫は、其の水溜まりに兴味を持ち、水を飲もうと進づいていったんだけど、通りがかりの猫に、「あの水は塩辛いから飲めないよ。」と言われてしまう。 ん?お前は分かった?水溜まりの正体。 そう。海だったんだよ。 猫は、それから海のことが気になって、毎晩遠くから海を眺めることにしたんだ。 近くで見るのが、恥ずかしがったなんだろうね。 仲間の猫たちは、「猫がいつも远くまで散歩に行くから、好きな猫に會いに行ってるんじゃないか。」って、噂をした。 猫は、好きとういう感情を、今まで知らなかった。 だから、仲間の猫たちがした噂は、海のことが好きになったのかもしれないと、猫が意識をするきっかけになったんだ。 そこで、猫は近づき、海の颜を見て、自分は本當に海のことを好きになったのかどうか、確かめることにした。 だけど、颜は見えず、その替わりに、自分の姿が映ったので、猫は逃げてしまった。 猫が逃げたのは、自分の颜を見せてくれない海に、嫌われたのかも知れないと思ったからなんだよ。 昔から、「恋をしたら、臆病になる」って言うでしょう。 もうこの時点で、猫は海に恋をしていたってことなんだろうね。 その一件以來、猫は海に進づくのは止めて、海のことを考えないようにしたんだ。 だけど、何をしていても、考えるのは海のことばかりで、忘れることができなかった。 そこで、猫は遠くからでもいいから、海のことを一目见れば、忘れることができるんじゃないかと思ったんだ。 猫はわざわざ、皆既日食の日を選んで、海のところへ行ってみることにした。 え?何で猫はその日を選んだか。 お、何でだっけ? ん、ちょっと忘れちゃった。 また后で読み返してみて、何でか分かったら、教えてあげるよ。 猫は远くから海を眺めようとすると、海が、「私のことが嫌いですか」と聞いてきた。 うん、そう。 海も猫と同じようなことを考えてたみたいだよ。 だから、お互いがどう思っているのか、二人は話してみることにしたんだ。 猫は驚いて、海の方こそ、自分のことが嫌いだったんじゃないのかと聞き返すと、海は違うんだと話し。 猫が自分のもとへとやって來ることが、嬉しがったんだと打ち上げたんだ。 猫が遠くから眺めていたことを、海は実は知ってたんだ。 だけど、やっと自分に近づいてきてくれたのかと思ったら、猫は逃げてしまったから。 すごく寂しかったと话した。 今度は猫が、「だって、海の颜を见ようと近づいたら、あなたの颜ではなく、仆の颜が映ったから。僕に近づかないで欲しいと、海が言ってると思った。だから逃げた。」と打ち上げた。 そうしたら海は、恥ずかしそうにこう言ったんだ。「私には颜がない、だけどその替わり、自分の気持ちを水面に映すことができる。だから猫の姿が映ったんだ。」と。 あふふふ~、気障だよね。なかなかこんなこと言えないよ。 お前がもし海だったら、何を映るのかな。 いや、誰が映るのかな。 そこで、猫と海はお互いの好きという思いを伝え合って、いつまでも仲良く暮らしたんだ。おしまい。 どうだった? そう。お前が気に入ってくれたなら、今回のプロモーションは好感触を得られそうかな。 うん、それにしても、この物語は現実の恋愛でもよくありそうな話しだね。 恋愛は1人でするものじゃないから、気持ちのすれ違いはどうしても起こることだと思うよ。 どんなに仲がよくでも、同じ人間じゃないからね。 そういう時に、お互いの気持ちをうまく汲み取ったり、猫や海のように伝え合ったりすることが、ちゃんとできたらいいんだろうね。 ん?何?もしかして、僕達も、気持ちがすれ違うんじゃないかって、心配してるんの? これから起こるであろうことをあれこれ心配しても、仕方のないことだよ。 だったら、今どうあるべきか考えろ方がいい。 例えば、お前は僕にどう可愛がってもらいだいんだろうとか考えたり、ね。 ふふふ、でも、そう思うってことは、何が心に引っかかれてもあるの? 僕がお前に愛してるって言わないから。 ふ~、好きじゃないんだよ。 簡単に愛してるとか、好きだとか言うのが。 もし愛してるって言葉を、毎日何千回言ってたら、きっとどんどん意味が軽くなっていくと思うんだ。 そうしたら、本當にお前に伝えたくなった時に、使えないよね。 だから嫌なんだ。 でも、お前が不安に感じてるなら。 (チュー) 僕なりにお前への思いを表現してみるよ。 (チュー) ううう、これだけじゃ、足りないな~ (チュー) ふふ、さあ、どこまでキスするのかな。 僕にも分からない。 だって、お前を思う気持ちは、これだけじゃ表現しきれないからね。 (チュー×3) やっぱり、これでも足りないな~。 あとは、どこにキスをすればいいかな。 ふ~、分かってくれたの。 へぇぇぇ、僕の思いがこれだけだと思ってるんだね。 何目を瞑ってるの。 そんなのは許さないよ。 瞑ってもいいのは、僕がお前の瞼にキスしてる時だけ。 (チュー×2) 僕はどれだけお前を思って、どこにキスをするのか、ちゃんと全部見てくれないと。 お前を、愛してる うふふふ~何、そんなに嬉しがったの。 僕だって、たまには愛してるって言うよ。 言うのは好きじゃないけど、別に言わないって言ってないでしょう。 それに、今はそういう気分だったし。 この分だと、きっとキス以上のことをしてみても、表現しきれなさそうだね。 それくらい、どうしようもなく、僕はお前のことを思ってるんだよ。 だから、お前の心配する時間は无駄。 その時間は、僕を思う時間に変えてよ。 それで、この胸を、僕で一杯にして。 僕だけしか、思うことができないようにね。