[00:19.55]詩を書いた位では間に合わない [00:21.89]淋しさが時として人間にはある [00:24.12]そこを抜け出ようと思えば思う程 [00:26.48]より深きモノに抱きすくめられるのもまたしかりだ [00:31.36]あらゆる色合いのものの哀れが [00:33.57]夫々の運を持ちて立ち現れては [00:35.84]命脈を焦がして尽きるものである時 [00:38.22]いかなる肉親とても幾多の他人のひとりだ [00:51.86]その死は実に無残ではあったが [00:56.43]私はそれをきれいだと思った [01:00.63]ああ覚、今もくれんの花が空に突き刺さり [01:06.89]哀しい肉のように咲いているど [01:18.24]阪和線富木駅南一番踏切り [01:20.43]枕木に血のりにそまった頭髪が揺れる [01:22.65]迎えに来た者だけが壊れた生の前にうずくまる [01:25.03]父、母、弟、兄であることなく [01:29.97]最後まで自分を手放さなかったものの [01:32.08]孤独にわりびかれた肉体の表白よ [01:34.37]水の生まれ出ずる青い山中で [01:36.70]待つのみでいい [01:37.52]どこへも行くな [01:38.33]こちら側へももう来るな [01:50.69]その死は実に無残ではあったが [01:55.29]私はそれをきれいだと思った [01:59.62]ああ覚、そうか死を賭けてまでもやる人生だったのだ [02:05.87]よくぞ走った [02:06.85]走ったぞ [02:07.71]無残の美 [02:09.75]